米国メディアは、ベゾスの買収をどう見たか? ワシントン・ポスト買収から始まる"メディア変革"

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デジタル購読者を増やせるか

現在、米国の大手新聞社のうち、デジタルの購読者数を最も多く抱えているのはニューヨーク・タイムズ紙で、既に6割がデジタルで購読しており、ウォールストリート・ジャーナル紙が続く。これらに対し、ワシントン・ポスト紙のデジタル購読者数はわずか9%だ。ニューヨークのスタンダードともいえる「デジタル購読者数を増やすことが新聞生き残りのカギである」というアプローチに、ベゾスのワシントン・ポスト紙が反旗を翻すことになるだろうか。  

ベゾス氏のワシントン・ポスト買収に関して、メディアの反応も様々だ。  

またMashableは「市民ケーン」になぞらえ、「市民ベゾスはジャーナリズムと最も良い友人になるか?」という記事を掲載している。アマゾンでは、記事以上・新書未満の長さの電子書籍を99セント(約100円)扱う「キンドルシングル」をスタートさせており、ベテランのジャーナリストが参加している。既に、新しいジャーナリズムの礎を作っているではないか、ということだ。  

これまで新聞社のインタビューに応じてきたオバマ大統領も、キンドルシングル向けのインタビューに応えている。しかもその記事は無料で配信された。こうしたメディアに対する変革を、ベゾスの本業であるアマゾンは展開している。これまでのジャーナリズムに対する理解と新しいメディアの変革の双方に深い理解を有しているベゾスは適任ではないか、と考える事ができる。  

一方で、フォーブスに投稿された記事では、「ベゾスは自信のブランディングのために、ワシントン・ポストを買った。ブランディングの参考になるが、深くその理由を考えるべきではない」としている。  

またワイヤードは「ベゾスがワシントン・ポストを、アマゾンを通じて買わなかったのは、両者を統合するための最良の方法だ」と指摘している。公開企業であるアマゾンが買収すると、不採算になりがちなワシントン・ポストを守ることができないためだ。おそらくアマゾンであれば、Twitter創業者が手がけるMediumのように、独自に情報の書き手を集めながら記事の質をソーシャルに評価するメディアの枠組みを作ることも、またそれらを販売する仕組みを持たせることも可能だったが、その方法を採らなかったことに、注目すべきだろう。

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