フランスが4万円スーツの大統領にお熱の訳 彼にとって一番のアピールポイントは何か
マクロン大統領の特異性を、後世の歴史がどう評価するかわかりませんが、ただ1点必ず記すことは「当時において史上最年少の大統領となった」こと。極論を言えば、いま彼のいちばんのセールポイントが“若さ”なのです。選挙前から、メディアはさんざん〈やんちゃ坊や〉〈甘ったれ〉〈駄々っ子〉などと揶揄していました。老獪な政治家たちに交じれば異質な存在です。なにしろ圧倒的に若いのですから。
若さとは神が与えた肉体のピークです。ほかの候補者たちと比べて、老獪さや賢明さ、大局観という点でマクロンが1番であるかといえば、そう言い切れるかどうかはわかりません。けれども、明らかにNo.1なのは若さ。若さは美しく、美しさは一目瞭然なのです。
若さに「過剰な装い」は必要ない
「その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春の美しきかも(与謝野晶子『みだれ髪』)」
若さの至高のコスチュームはなんでしょう? きっとそれは何も身に着けないことです。男も女も、余計な修飾はいらない、弾けるような若さの前で、誰が面を冒して対峙できるというのでしょう!
昔から、「鬼も十八番茶も出花」といいます。江戸時代後期の文人、頼山陽はかく歌いました。
「京都三条糸屋の娘 姉は十六妹が十四 諸国大名弓矢で殺す 糸屋の娘は眼で殺す」と。
若いということは、ただそれだけで凶暴な武器になるのです。そこに、過剰なメイクや身の丈に合わないファッションは必要ありません。全人類共通の美しき一瞬に咲く花のあはれです。
さて、やや脱線しましたが、39歳のマクロン。体のラインも緩んでいません。高価でスタイリッシュなスーツでなくとも、まだ十分の見栄えがします。キメすぎてしまったら“Oh too much!”となりかねません。あえて抜く、これもセンシュアリティかもしれません。一方、64歳のブリジットは成熟した風格で、きっちりブランドでキメています。このカップルはカップルであることで、絶妙のセンシュアルなバランスを保つ天賦の「巧まざる技」を持っているようさえに思えます。
くれぐれも勘違いしないでください。マクロンのスタイルを見習えるのは、同じような「若さ」をもつ人に限ります。ある程度の年齢で、ある程度の贅肉を蓄えられるようになったら、自分のラインをきっちりと美しくプロデュースする“仕立てもの”のスーツをおすすめします。なんといっても、男性のスーツは女性ものと違って長く持ちますし、その差は一目瞭然ですからね。
そういえば1920年アメリカ、禁酒法時代のクライム映画『Live by Night(夜に生きる)』の中の、大物ギャングのジャストフィットしているスーツ姿にはため息ものでした。
当時のスーツ姿はエリートかマフィアくらいなもので、むろんすべて誂(あつら)えだったのでしょう。計算され尽くした大人の男のスタイルはセンシュアルです。その背中の美しいシルエットに多くの女性たちはドキッとするものですよ。
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