消費増税決断で、再び1ドル103円目指す 市場動向を読む(為替)

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円安進行のもう一つの理由は消費増税に伴うインフレ率の上昇であろう。それに伴って実質金利が低下し、円安圧力が高まると考えられる。

昨秋以降の円安局面でも、一部は消費増税に伴う物価水準の上昇を織り込む必要もあり、債券市場の期待インフレ率(BEI)が急上昇した。名目金利の上昇が抑制される中、実質金利に相当する物価連動債利回りは急低下。物価連動債利回り格差が米ドル有利に拡大し、円安が促されてきた。

BEIは今年5月をピークに足元まで頭打ちとなってきた。その間、ドル円は円高で推移してきた。だが、消費増税が正式に決まるのであれば、BEIは5月の水準を超えて上昇する公算が高い。

しかも、この場合、日銀は消費増税後の景気悪化を防ぐために、追加緩和措置の検討を始める可能性が高まる。特に、財務省出身の黒田総裁は財政再建の必要性を強く認識していると見られる。実際、8月8日の定例会見の際、黒田総裁は「脱デフレと消費税増税は両立する」と言明。暗に、政府に法案通りの消費税引き上げを促した。事実上、これは消費増税時に追加緩和の準備があることを認めたに等しい。

BEIが上昇する中、日銀の緩和強化で名目金利の上昇は押え込まれ、実質金利は一段と低下する可能性が高い。為替市場では円安圧力が高まると考えるのが自然であろう。

消費増税が国際収支に与える影響

今回、もう一つ考慮すべきなのは日本の国際収支である。思うに、昨秋以降の円安のファンダメンタルズ的な背景となったのは日本の国際収支の悪化であり、消費増税もこれに影響を及ぼす。

今秋に消費増税が確定的となれば、今年10~12月期ぐらいからは、来年4月の消費増税を前に駆け込み需要が日本の内需を押し上げ始めるだろう。底堅い内需を背景に、輸入は改めて増加圧力を受け、貿易収支の悪化要因、ひいては円安要因として作用するはずだ。

もちろん、その反面、消費増税後は駆け込み需要が剥落、輸入が減少して貿易収支は改善するはずだ。だが、その時に米経済が堅調を維持していれば、上記した日米景況格差や実質金利差の拡大に市場の関心は集中。市場の中で特段、日本の貿易収支の改善が円高要因として材料視されることはないと思われる。

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