「スッキリ熟年離婚はおトク」は本当なのか 「慰謝料は多い人でも300万円」が現実

拡大
縮小

次に財産分与ですが、これは結婚期間に築いた財産は夫婦2人の力によるものという考え方ですから、半分が目安になります。

ただ、普通のサラリーマンの場合、財産といってもその多くは自宅ですし、それもまだローンが残っていたりするとその分を引かなければなりませんから、相当な金融資産でも持っていないかぎりは離婚した奥さんも、そんなにおカネを受け取れるわけではありません。

無理して熟年離婚すると、2人とも「離婚ビンボー」に

最後は年金です。2007(平成19)年以降、離婚した場合に夫の年金を分割できるということで離婚を決意した妻が増えたとよくいわれますが、これも実際のところは、思ったほどもらえるわけではありません。

分割できるのは厚生年金だけですから、仮に夫が自営業の場合、妻は一銭も分割でもらえません。

もし夫がサラリーマンであれば、専業主婦の妻の場合、半分はもらえますが、これは結婚期間に相当する部分ですから、たとえば結婚期間が30年で、その間の厚生年金が月額にして10万円ぐらいだとすれば、その半分の5万円が妻の分です。ということは、妻の分の基礎年金と合わせても10万円を少し超える程度ですから、それだけで十分な老後の暮らしができるかどうかは疑問です。

一方、夫にとっても本来受け取れる厚生年金の金額が半分になってしまうわけですから、さらに老後の生活は心細くなります。熟年離婚によって夫婦共に「老後ビンボー」ということになりかねません。

結局、経済的なことに限っていえば、2人とも働いて夫婦仲良く暮らすというのがベストな選択だといえるでしょう。どの世代においても夫婦共働きは老後ビンボーに陥らないための最強の方法です。前回の私の記事「定年後は月8万円稼ぐことができれば十分だ」でも、「夫婦2人で月に8万円稼ぐことができれば経済的な不安はかなり少なくなる」と言ったとおりですが、さらに夫婦がそれぞれ仕事を持って働き続けるというのは経済的な面以外にもメリットがあるのです。

次ページ共働きのメリットはおカネだけじゃない
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT