児童虐待の背景に「育児資源の不足」がある 家族の機能をもっと社会で担う必要がある
紫原:そこから、適切な養育ができるようにするためには、具体的にどういったカウンセリングをされるんでしょうか。親御さんのほうも、子育てのこのやり方が間違っていたとわかっても、今度は正しい接し方がわからないという場合もありますよね?
小澤:たとえば、子どもが遊んでいるときに、どんな言葉がけをいつすればよいかなど、研修と実践で、具体的に学んでもらうプログラムもあります。親御さんの声掛けで、子どもの気持ち、行動、母親の気持ちがどんなふうに変化したか、変わらない場合にはどうしたらよいかを一緒に考えていくんですね。
紫原:とても実践的ですね。
「虐待は育児の連続体」
紫原:そもそも、虐待はどういう環境で起こりやすいものなんでしょうか。
小澤:それについては、厚生労働省が、養育者側、子ども側、養育環境、それぞれがどういう場合に虐待が起こりやすいか、という要因をまとめています。
紫原: 保護者の要因としては「望まない妊娠、10代の妊娠」、子どもの要因には「何らかの育てにくさをもっている子ども」など、かなり具体的にリスクとなりうる要因が挙げられているんですね。
小澤:はい。ただ、当然ですが、必ずしもこれらの要因があるから虐待が起こるとも限りません。ある先生が、“虐待は育児の連続体”とおっしゃいました。そもそも誰にも起こりうることなんです。けれど、みんなが虐待に至るわけでもない。じゃあ、どんな環境であれば、親御さんが自分だけで頑張らなくていいと思えるのか、虐待が防げるのかということを考えることが重要だと思うんです。
紫原:具体的には、どういう状況があると良いのでしょうか。
小澤:養育者が孤立せず、1人で育てなくて良いような、誰かに頼れる状態をつくることで、変わりうることがあるのかもしれないと思います。というのも、おカネや時間、困ったときに頼れる身近な人など、子育てにはたくさんの資源を必要とします。それらが足りない中で特定の養育者が子育てをするというのは、本当に大変なことなんです。
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