児童虐待の背景に「育児資源の不足」がある 家族の機能をもっと社会で担う必要がある

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紫原:PIECESでは具体的にどういうことをなさっているんでしょうか。

小澤:PIECESには、“コミュニティユースワーカー”と呼んでいるメンバーが在籍していて、それぞれが複数の子どもを担当します。子どもたちの抱える状況はさまざまですが、たとえば、親御さんが家庭で子どもとかかわることが難しく、いじめなどの理由から学校にも行かない選択をしている子どもがいます。まずはそういった子たちが安心できるような関係性を、丁寧につくっていくんです。

そのうえで、子どもが家以外にも、自ら進んで行きたくなる場を、子どもの興味関心やニーズに合わせて一緒につくっていきます。最近は企業の人や、プロのクリエーターさんなどにも協力していただいていますね。

紫原:プログラミング教室なんかも開催されていますよね。

小澤:ええ。それももともとは、1人の男の子の関心からスタートしました。初めのうちは家の近くに迎えに行って、一緒に会場まで行くといったこともやります。そのうち子ども自身が自分で行き来できるようになりますし、送り迎えの間の雑談で、関係を深めることもあれば、知らないその子の一面を発見することもあって、侮れないんですよ。

サポートがなければいつまでも孤立したまま

紫原:とても地道なかかわりですね!

小澤:そうなんです。地道ですが、もしこういった外からの何らかのサポートがなければ、その子はいつまでも家庭の中で孤立したままです。社会と繋がる機会を持てないんですね。

かつてこうした役割は、おじいちゃんおばあちゃんや親戚、近所のお兄ちゃんやお姉ちゃんが担っていたことかもしれません。でも、今は核家族が増えて、それが難しくなっている。一方で、かつて当たり前だった、親戚やご近所などの近い強いつながりがたくさんある状態は、煩わしさや、監視されている感覚も伴っていたのではないかと思います。人口動態も変化した今、過去に回帰することはもう難しいですしね。

過去家族や親戚が担っていた、子どもにとっての親密圏を担う存在や、子どもと社会とをつなぐ紐帯を担う存在を、これからの時代の変化に合わせて、新たにつくっていく必要があると思ったんです。

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