メイ首相は「要らぬギャンブル」で敗退した 悪夢としか言いようがない結末に

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ポンドドル相場は、なお1.20台が視野

以上のような選挙結果を受けてポンドドルは前日比約2.0%急落しており、一時1.27台を割り込んだ。もともとポンドドル相場は昨年のブレグジット決定以降、徐々に値を切り下げ、昨秋を境にようやくボトムアウトして、堅調な地合いにあった。しかし、選挙を経て一気に手放す動きが強まった。

これを購買力平価(PPP、消費者物価指数ベース、2000年Q1基準)からの乖離という観点で見れば、昨秋のポンド最安値近辺では歴史的な下限と見られる20%程度(≒1.20付近)まで一時乖離しており、これが戻ってきたという過程でもあった。そのため、足許からはまだ下げ余地があるという見方もできるかもしれない。現段階ではクリフエッジ・リスクが払拭されていないどころか増大している可能性もあるため、やはり今後1年で1.20を視野に入れた値動きを警戒しておく価値はあると考えたい。

それにしても「要らぬギャンブル」の成れの果てとして残ったものは、不安定な政治と不安定な為替相場、そしてその結果としての動揺する実体経済だけだった。恐らく、今後の英経済はポンド安経由のインフレを受けて実質所得環境が悪化し、減速してくる可能性が高いのだろう。英国の政治家は今度こそ「国家の命運を左右する話をむやみに世論へ投げてはいけない」と痛感することになったのではないか。唯一良いことがあったとすれば、英国が混乱するほど、EUは「見せしめ」を手に入れることになり、域内の結束を強めやすくなるということだろうか。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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