英総選挙もやはり牛耳る「静かな勢力」の正体

そこに欧州が抱える本質的な問題がある

一方、60代以上の実収入は増えている。緊縮政策によって労働者への手当ては削減されたが、国民年金は手をつけられていない。いわゆる「トリプルロック」によって守られている。インフレ率、平均賃金上昇率、もしくは2.5%のうち、どれか最も高いものが適用され、毎年上昇することが保証されているのである。

高齢者から圧倒的な支持を得ているメイ首相だが、今回は若者の票の獲得をもくろんで高齢者への国からの支援を削減する計画を提案した。トリプルロックを「ダブルロック」に差し替えるなどだ。この案では、2.5%が外された。

首相が打ち出した案の中で最も物議を醸したのは、資産を持っている高齢者には社会介護費用を自己負担させるというものだった。その資産には住宅などが含まれている。そうすると、死後まで支払いが続く高齢者も出てくる。この提案は裏目に出た。すぐに「認知症税」との呼び名が付いたからだ。首相はすぐさま案の変更を余儀なくされ、彼女が目指した「強く安定した」指導者とは程遠い存在となってしまった。

若年層の「勢力」が弱まっている

ソーシャルケアの失敗や、若者の不満に圧され、労働党の支持率が急増しているにもかかわらず、大多数の世論調査員は、その規模こそ不透明になったものの、やはりメイ首相が勝利すると予想している。

その主な理由は、世代間で投票率が異なることにある。英国では高齢化が進んでいるだけでなく、高齢者層の投票率がほかの年齢層に比べ圧倒的に高いからだ。昨年の国民投票では、65歳以上の国民の90%が投票した一方、18~24歳の投票率は64%、25~39歳でも同様の結果だった。

昨年の投票結果が予想と異なった原因は、投票率の予想が外れたことにある。労働党が保守党に追いつくとした予想では、選挙前の若者の意思表示を基に、若者の投票率が高くなることを想定していた。ところが、結果は保守党の圧倒的優勢であったため、実際の若者の投票率は過去の割合と変わっていないことが予想される。

選挙で明らかとなった世代間のギャップは、イギリスの高齢化社会関連法案にもいえることだ。これは英国だけの問題ではない。イタリアの一般選挙では、年配者の支持を集める現民主党が、不満を抱えた若者の支持を得ている反政府政党の五つ星運動と戦う。経済や社会を大きく変化させているサイレントフォース(静かな勢力)「高齢化」は、政治をも変えているのである。

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