ベトナム人の死と外国人収容所の過酷な実態 収容者が見た壮絶な最期

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日本政府が非正規滞在の外国人の取り締まりを強化している中、収容される人の数は増えている。これに伴って、仮放免者数も急増しており、2015年末には3606人と過去最多に。入管によると、6月7日時点で収容されている人の数は全国で1342人に上っている。

ただ、仮放免されたところで、在留資格がないため、正規に働いたり、社会保障を受けたりすることができない。こうした「グレーゾーン」の対象者が増えている中、日本政府は近年、仮放免者の再収容を増やしているとされる。「今回、東京入管でハンガーストライキを始めた22人のうち15人は3回以上収容されている」(宮廻事務局長)。

これに対して入管は、「そもそも(不法滞在が摘発され)退去強制令書が出された場合は、お国に帰ってもらわないといけない。それでも、人道的配慮で仮放免を行っている。しかし、たとえば仮放免中に仕事をするなど、仮放免中に違反があった場合、再収容するなどして適切に対応している」としている。

確かに、不法滞在を摘発されたなら、母国に帰ればいいと思うかもしれない。実際、多くは母国へ戻る。しかし、なかには母国が紛争に巻き込まれていたり、日本滞在期間が長期化して生活の基盤が日本にできていたり、日本人と結婚したり、子どもが日本で生まれたりというケースもある。

バブル期はアジアで労働者をリクルート

「日本ではバブル期から2003年くらいまで多くのフィリピン人が入国し、働いていた。つまり、日本も彼らを労働力として使っていた。すごいケースだと、アジア諸国にリクルーターが行って、人材募集をかけたり。ところが、2004年の入管法改正によりオーバーステイを取り締まるようになってから帰国を迫られるようになった」(宮廻事務局長)

こうした事情がある人たちの「半分は難民申請をしていると感じる」(宮廻事務局長)というが、日本で難民申請が受け入れられにくいのは周知の事実。実際、昨年は過去最多の1万0901人(前年比44%増)が難民認定申請を行ったが、このうち認められたのは28人。申請が認められなかったものの、在留資格を得た人とあわせると125人が合法的に在留する資格を得たわけだが、これは申請した人のわずか1%だ。

ベトナム大使館はグエンさんの件について何のコメントも出していない。グエンさんの死は、それ以前に亡くなった収容者と同じく、日本のメディアや政治家からも大きな注目を集めていない。

グエンさんの葬儀は4月上旬に執り行われた。支援者によると、約30人が葬儀に参列したそうだ。その中には入国管理局の職員が3人いた。グエンさんは47歳、または48歳だった。彼の死の真相は明らかにされるべきではないだろうか。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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