新幹線vs.航空「30年戦争」の勝者はどちらか 国鉄民営化でサービス競争が激化した

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新幹線が「4時間の壁」を切ると航空機から新幹線の旅客シフトが始まる(撮影:尾形文繁、梅谷秀司)

新幹線など鉄道を使って4時間以内で行けるようになると、鉄道が航空路線に比べて優位に立つようになる。このことを示す有名な言葉が「4時間の壁」である。東海道新幹線を例に取るとわかりやすい。東京駅から4時間以内の岡山までは圧倒的に新幹線のシェアが高く、東京―広島では新幹線と航空路線のシェアが拮抗し、博多へは飛行機のシェアが高くなっている。

上越新幹線開業で羽田―新潟線が運休へ

新幹線の開業は航空業界に大きな影響を与えてきた。1980年以降では、82年の東北新幹線の盛岡開業後には航空路線の羽田―仙台・花巻線が、同年の上越新幹線の新潟開業後は羽田―新潟線などが運休の憂き目を見た。新幹線で2~3時間でアクセスできるようになったことで、競合する航空路線をそれまで利用していた人が新幹線に完全にシフトした結果だ。

今では新幹線「はやぶさ」で東京―仙台間の所要時間は最速1時間31分、東京―盛岡間は2時間11分。東京―新潟間も最速列車で1時間37分となっている。これらの路線に飛行機が飛んでいたことを知らない世代も多くなっている。

だが、その後の新幹線開業では変化が生じている。たとえば山形新幹線は92年に山形駅まで開業し、99年には新庄駅まで延伸。2002年にはANA(全日本空輸)の羽田―山形線が運休となったが、翌2003年に旧JAS(日本エアシステム)が1日1往復での運航を開始した。その後、JASはJAL(日本航空)と合併し、羽田―山形便はJAL便となった。

さらに、航空会社の自助努力のみでは維持・充実が困難な路線で、地域と航空会社による共同提案によって優れた路線に羽田空港の発着枠を配分する国土交通省実施の「羽田発着枠政策コンテスト」があり、2014年3月からこの路線では1日2往復が実現した。2014年度の旅客数は前年度に比べ約2.6倍の7万4687人を記録、2015年度以降も引き続き増加している。

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