《対決!世界の大空港4》中国・北京/上海 航空自由化へカウントダウン、激安に火花散る中国の空
日系より4万円も安値 破格の料金で乗継客急増
「北京で乗り換えると現地滞在時間が短くなる。でもこの安さは見逃せない」。東京近郊に住む日本人のOL3人組は言う。ドイツ旅行へのフライトに、成田発、北京経由、フランクフルト着の国航便を選んだ。価格は燃油サーチャージ抜きで約6万円。日系など他の外資の直行便より実に4万円も安かった。「乗り心地はまあまあだけど、こんなに安いならまた搭乗するかな」。
日本の地方空港から海外に飛ぶ際も、成田を経由するより中国で乗り継いだほうが格段に安い。あらゆる最終行き先で安値上位に名を連ねるのが中国乗り継ぎの特徴だ。
安さを武器に、08年5月までの5カ月で国航の国際乗継客は前年同期比2・2倍に拡大した。特にアジアと欧州を結ぶ路線で伸びている。
なぜこれほど安いのか。「最大の要因は人件費の低さ。これは機上サービスから補修まで全般に影響する」と国航の樊澄・副総裁は言う。
エアラインは乗客数の多寡にかかわらず機材リース料など固定費が莫大にかかるが、そのうち大きな部分を占めるのがパイロットや客室乗務員らの人件費だ。「国航の人件費はコスト全体の1割程度。欧米の同業は従来なら3割、燃料費が高騰した現在でも2割方を占めているはずだ」。この差がまず価格差を生む。対ドルで進む人民元高も、もう一つの主要な固定費である燃料の調達でバイイングパワーを発揮している。
就航都市は年々増加の一途で、現在は国内外合わせて28カ国69都市で運航している国航。「今後は欧米に加え、まだ路線がない中東、アフリカ、便数を増やす余地がある東南アジアが重点地域」(樊副総裁)。だが、日本への便は「極力絞る。現在の7都市は多すぎる、3都市で十分だ」(同)。北京にとって東名阪以外の就航は、不採算なポイント・トゥ・ポイント路線でしかない。北京が見切りをつける日本の地方空港の需要取り込みは、すでに日本の17空港と路線を結んでいる別の3大ハブの一つ、上海が担当するようだ。
その上海にさらに近未来の中国の姿があった。米貨物大手UPSは今夏、上海浦東国際空港の南端に自社航空機で集荷・分配する貨物ハブ施設を稼働させる。
UPSがハブを設けるのはドイツ、米国、シンガポールなどに続き世界8カ国目。現在、広州、青島など中国12都市に分散する輸送機能の大半を上海に集め、「自社の管理で効率的に輸送機を発着させ、輸送量拡大や時間短縮を実現する」(UPSの黎松江・中国区総裁)という。