好発進でも続くシャープの正念場 注目の第1四半期は堅調だが、喜んでもいられない
尽きない懸念材料
ただし好発進といっても今期計画自体が下期偏重なだけに、まだまだ安心できる状況にはない。
太陽電池は、官製特需という意味で、地デジ移行前の液晶テレビと似た構図だ。「今は国内需要が支えているが、長くは続かない」(シャープ社員)。特需が去った後の反動減の怖さも液晶テレビで学んだとおりだ。
液晶も稼働率こそ高まったが、安値受注で収益性は低い。中計に掲げる好採算の中小型へのシフトも進んでいない。会社方針では中小型を今期中に約5割に高め、その多くを独自液晶「IGZO」で占めたいとするが、「(中小型の)ウルトラブックの需要はまだ見えておらず、IGZOも予想より伸びていない」(シャープ関係者)。アイフォーン向け液晶を製造する亀山第1工場も「次期機種向けが順調に立ち上がっていない」(同)といい、6月からフル稼働としていた計画は未達だ。
加えて、NTTドコモの「ツートップ戦略」が打撃となった携帯電話・スマートフォンなど、早くも年間計画を下方修正した事業もある。7月末には発火のおそれがあると洗濯機72万台のリコールを発表。白モノ家電は比較的安定していただけに、影響の広がりが心配される。
今期末には新会計基準適用に伴い、年金積み立て不足約1200億円を計上する予定であり、資本増強が実現しなければ、そうとう苦しくなることは間違いない。さらに来期には計1300億円の普通社債の償還も控えており、資金繰りでも綱渡りは続く。
懸念されるのは、好発進で社内に安堵感が広がることだ。シャープは中計達成に向け、脱自前主義などの改革を掲げる。多少明るさが見えた今こそ、その徹底が不可欠だ。
(撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2013年8月10-17日合併特大号)
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