特急「リバティ」運行初日の夜に乗車してみた 東武期待の新型列車、通勤時間帯の状況は?

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ゆっくり野田線に渡る最中、早くも次の八木崎の到着案内が流れてきた。大宮行きは岩槻まで各駅に停車する。春日部は本来の大宮行きホームではなかったため乗車は限られたが、それでも座れない人が出て、デッキに立つ。線内利用に有用となるかどうかは落ち着いてからの直通客次第だが、3両と短くてドアも少ない列車に立って乗るとは思えないから、棲み分けがなされてゆくだろう。

途中駅でチラホラと、そして岩槻である程度の乗客が下りて、背広姿の男性客や女性客は消えた。彼らがこの列車の本来の乗客と言える。なおも車内に6割程度の乗客が残ったのは、これも初日の試乗ゆえだ。東京都心から大宮近辺ならば春日部経由の必要はまったくない。だから、岩槻から先は回送同然のノンストップ運転となる。

一方、この区間の利用にしてみれば特別料金もかからず心地よい座席に座り、しかもスピーディに運ばれるのだから、狙い目だ。首都圏で最もぜいたくな“無料”優等列車かも知れない。深夜に近く、帰宅の主方向とは逆だから利用機会も少ないだろうが、この列車の今後の姿は興味深い。

大宮に到着すると、すぐに座席転換の整備が入って、これが折り返し運河行き「アーバンパークライナー2号」となる。23時に近いが東京圏の一画においては、ホームは混雑している。それだけに新登場の列車は注目を集める。

試乗組は春日部で下車

今度の列車は大宮~春日部間がノンストップで、その先は全駅に停車する。したがって特急券面の行先は春日部である。春日部までは14分で、特急区間は短い。普通との差も6分。そこだけを捉えると利用があるのかと思わないでもない。だが、短区間ゆえに310円と安い特急料金、それで春日部の先までゆったり帰宅できること、それに大宮駅の人のボリュームを考えると、勝算ありだろう。

試乗組も、帰宅を考えると最後までの付き合いはむずかしく、22時57分着の春日部下車が多かった。だが、代わって今度は普通の帰宅客が乗ってくる。大宮行き以上の勢いで、しばし6両編成が要るのではと思う混雑になった。

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大勢が立つ状態は川間、七光台と過ぎてようやく落ち着いたが、そうなると乗り過ごしが心配なほど、非常に快適な普通電車と化す。23時22分の野田市でまとまった下車があり、利根運河が名の由来の運河には23時28分着。大宮、春日部側からの流動はこの辺りまでらしいので、変哲のない駅だが、そこで列車は終着となる。

東武鉄道は4月28日、2020年の東京オリンピック・パラリンピックとその後を見据えた中期経営計画を発表した。その中で500系の増備と、新しいフラッグシップ特急車の導入も明らかにした。様子はさらに変化しそうだ。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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