フランスが国際テロの標的になる3つの理由 政治学者ジル・ケペル氏の分析とは?
中東では「アラブの春」と呼ばれる反独裁政権運動が広がり(2010年末~2011年)、世界各地で破壊的な状況が生じた。アラブ世界がより民主化されることを多くの人が願ったが、リビア、チュニジア、マリ、シリア、イエメンは大混乱状態となった。欧州からこうした国にほんの100ユーロ(約1万2000円)もあれば行ける。
そこで、数千人規模の欧州に住む若者たちがイスラム過激集団「イスラム国」(IS)の一員として戦闘に参加するために現地に出掛け、そこで戦闘訓練を積み、母国で攻撃を開始するために戻ってくるようになった。
さらに、2000年ごろからサラフィー主義(注:イスラム教スンナ派の思想。厳格な復古主義が特徴でイスラム国家の建設を求める)というイデオロギーが広がっていた。
こうした複数の要素が欧州でのテロ多発につながった。
生まれる疎外感
――なぜ、ことさらフランスが狙われるのか。
確かに多発している。2015年1月、風刺雑誌『シャルリ・エブド』の編集部が攻撃されてから昨年7月26日にジャック・アメル神父がミサの最中にISに心酔した青年らにのどを切り裂かれて亡くなった事件までの間に、239人がテロによって命を落とした。
そこには3つの要因がある。
まず、フランスはEUの中でも失業率が高い。若者層に限るとドイツや英国よりもはるかに高い。そして、雇用市場に入りにくく、流動性が低い。
このため、移民の子どもたちが住み、失業率が40%近くにも達する「郊外」(「banlieue=バンリュー」と呼ばれる)の住民の間に疎外感が生まれている。
その一方で、イスラム教徒ではない国民も同様の疎外感を持っている。反移民の極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン氏に大統領選で票を投じるような人々だ。彼女に投票するのは仕事がないからだ。親の世代よりも自分たちは生活の水準が低下していると感じている。
イスラム過激主義に向かう人々と、非イスラム教徒でルペン氏に投票するような人々が並行して存在している。互いに対立する立場にあるものの、疎外感という点では共通する部分がある。
2つ目の要因はフランスが植民地の宗主国であった点だ。現在のフランスはフランス共和国であると同時に、かつての植民地アルジェリア、モロッコ、セネガルとつながっていた過去がある。元植民地出身者の子どもたちが、今フランスに住んでいる。
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