若林栄四氏「2022年の為替は1ドル65円だ」 伝説の為替ディーラーに5年後の経済を聞く

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また、個人投資家に人気の高い豪ドルについては、「豪ドルは資源国通貨。したがって、資源価格、特にWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)などの原油先物価格の値動きに左右される。

WTIは2008年7月に付けた1バレル=147ドルからの下降トレンドが続いており、昨年の底値から戻ったといっても1バレル51~55ドルのところに最も大きなレジスタンス(抵抗)ラインがあるので、これを超えて上昇するのは、容易なことではない。そうである以上、資源国通貨である豪ドルの上昇余地にも限界がある」という。

2022年にかけ、これから金が上昇する

もしこれから投資妙味が高まるとしたら金(GOLD)だ。金が民間で自由に取引できるようになってから、ドル建て金価格が最安値を付けたのが、1976年8月の1トロイオンス=101ドルだ。そこから黄金分割の重要日柄である40年半後が2017年2月だった。これから目先、1600ドル台を目指すだろう。

しかし、もしこれから円高、デフレ基調に入るとしても、金はインフレに強い資産ではないのか。「金は実際には資産デフレの時こそ本領を発揮する。1929年の世界恐慌、2008年のリーマンショックでは、いずれも金が買われ、価格は暴騰した。2022年にかけて米国株や日本株が下落するなか、再び金が見直される。2022年の第1四半期に、1トロイオンス=2700ドルと見ている」。

さて、2022年にドル円が1ドル=65円台という超円高になるなら、当然、日本株も厳しい動きになりそうだ。若林氏はどこまで日本株の下落を見ているのだろうか。

「1ドル=65円台まで円高が進むなか、日本は大きく言って、デフレの二番底へと向かうだろう。それまでに、日経平均株価の1万円割れは覚悟したほうがいい。当然、1ドル=65円という超円高になれば、マーケットはパニック状態に陥る。さすがに、日本政府も黙って指をくわえて見ているわけにはいかなくなるだろう。しかし、金利はマイナス圏、財政赤字も深刻な状況なので、打てる手は限られてくる。そこでヘリコプターマネーの導入がいよいよ現実味を帯びてくる」

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ヘリコプターマネーとは、財務省が発行する日本国債を、日銀が直接引き受けることだ。これにより、市中には湯水のごとく、マネーが出回り、インフレになる可能性が高まる。「副作用はあるが、ヘリコプターマネー導入で、日本は完全にデフレから脱却し、景気も好転する。2030年くらいまで好景気が続き、この間に、日経平均株価は4万円を達成するだろう」。

「日経平均株価4万円」という見通しを立てるマーケット関係者は複数存在する。が、その前には同平均株価が1万円を割り込むという厳しい局面を生き残らなければならないというわけだ。

「今からキャッシュを抱え込むには、2022年までの約5年間は長すぎる。その合間を埋めるのに、2022年に向けて上昇が期待される金への投資に妙味がある」というのが、若林氏の見立てだ。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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