京急が「整列乗車位置」を4つに増やした理由 「プロ仕様」?品川駅ホーム上を4つに色分け

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4つに色分けされた整列枠のうち、もっともスペースが広いのは、横3列のスペースがある緑色の「泉岳寺・品川始発の横浜方面行きと、品川で増結する車両」の枠。京急によると、夕方・夜間に同駅始発列車で座って帰ろうという人が多く並ぶためだ。青い羽田空港行きの枠は2列だが、大きな荷物を持った人が多いことを考慮し「少しだけ広くしている」(京急)という。

ちなみに、同社は2020年度までに京急蒲田・京急川崎・横浜・上大岡・羽田空港国内線ターミナルの5駅に、新たにホームドアを設置する方針だ。今回の整列位置変更の背景に、ホームドア整備に向けた狙いもあるのでは……とも思ってしまうが、京急によると「それは関係ない」という。

沿線利用者にはすでに浸透?

さて、肝心の利用者の声はどうだろうか。整列位置変更から約1週間が経った平日夜ラッシュ時のホーム上は、すでに新たな整列位置がだいぶ浸透している様子。普通列車を待っていた女性は「めっちゃわかりやすくなった」と新方式を評価した。

整列枠には「横浜方面」「羽田空港行」などの文字や飛行機マークが目立つように描かれており、大きな荷物を持った空港利用者も迷う人は少ないようだ。ただ、次に来る横浜方面行きが始発なのか、都営浅草線からの直通なのかは案内放送などに注意していないとややわかりにくく、列車が到着した後に別の整列枠からなだれこむ利用者も見られた。

また、羽田空港行きの枠には並んだものの「どの列車に乗ればいいかわからなかった」という外国人男性も。整列枠はあくまで列車を待つためのエリアで、車両のドア位置とは一致していない。到着した列車がどの整列位置に対応しているかを、外国人など不慣れな人にわかりやすく示す方法は検討の余地がありそうだ。

京急によると、乗客からの反応は「従来よりもわかりやすくなったという声もあれば、もっとわかりやすくしてほしいという声もある」。同社は「まだまだ認知には時間を要すると思う。初めて利用する人が多い駅でもあり、今後も丁寧に案内していきたい」という。

日本の鉄道の特徴とも言われる「整列乗車」。先発・次発などを分けるだけでなく、複数の目的地へ向かう列車が発着する1本のホームを効率的に活用するための工夫は、沿線住民だけでなく羽田空港を利用する外国人利用者らにも「わかりやすい方法」として受け入れられていくだろうか。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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