安倍改憲の本丸「9条改正」に待ち受ける関門 ついに改憲をブチ上げた首相の戦略とは?

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このため、永田町では「2019年夏の参院選とのダブル選が本命」(自民選対)との見方が広がる。その背景には「次の衆院選で与党が40前後の議席減となっても維新などを加えれば3分の2は維持できる。だが、前々回2013年の自民大勝(65議席)のあおりで、その議員が改選となる次回参院選での10前後の議席減は避けられず、参院での3分の2維持は困難」(同)という読みがあるからだ。

参院で3分の2を失えば、その後の改憲発議は困難になる。このため、単独の国民投票の場合でも改憲発議は参院選前の2019年の通常国会がタイムリミットとされ、参院選を経ての2019年秋か2020年春の国民投票が現実的選択肢となる。

「自公維」による発議強行に公明代表は否定的

ただ、こうした「中央突破」ともみえる戦略には公明党の理解と協力が前提となるが、同党は「改憲は与野党合意が前提で、少なくとも野党第1党の協力が不可欠」(幹部)と慎重だ。山口那津男代表も「時間を区切るべきではない」と自公維などの改憲勢力による改憲発議強行には否定的だ。

さらに問題なのが9条での「自衛隊の明文化」だ。石破茂前地方創生相は「今まで積み重ねた党内論議にはなかった考え方で、矛盾が解消されない」と嚙みついた。一方、民進党は蓮舫代表が「総理の総理による総理のための改憲には絶対反対」とボルテージを上げ、改憲私案を公表して代表代行を辞任した細野豪志元環境相も「考え方には賛成」としながらも「丁寧な合意形成」を求めた。

「9条改正」については世論調査でも賛否が拮抗している。「9条改正は難しい」と漏らしたとされる首相だけに、「状況次第で"本丸"の9条改正はあきらめて、国民の抵抗も少ない"お試し改憲"に軌道修正する」(自民幹部)との見方も消えない。

「安倍改憲」という勝負手を放った首相は、その直後から連休後半を休暇に当て、山梨県下の別荘を拠点に大好きなゴルフなどで英気を養った。

首相は改正憲法の「2020年施行」の理由に「東京五輪による新しい日本」を挙げ、緊迫化する北朝鮮危機を背景に平和憲法の象徴ともいえる「9条」の見直しに挑戦する。今国会成立が確実な「生前退位」関連法で、2018年中の天皇陛下退位と2019年元旦からの新元号制定という「時代の変わり目」に日本を率いるはずの安倍首相。だが、改憲を頂点とする「したたかだがあざといレガシー作り」(首相経験者)が国民の高い評価を得られるのかどうか…。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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