シンガポールで日本製「新交通」が人気のワケ 三菱重工のシステムが空港や市内交通に

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完全無人運転のため先頭に運転席はない(筆者撮影)

MRT北東線でセンカン駅に向かい、三菱製車両の走るセンカンLRTに乗り換える。運賃はSMRTもSBSも一体となっており、MRTとLRTの間に中間改札はなく、乗車券は通しで買える。車両はチャンギ国際空港と基本的に同じだが、デザインはやや異なり、2両編成もある。どちらも運転士がいない完全無人運転だ。

沿線は、ループの内側は集合住宅がびっしり立ち並んでいるのに対し、外側は緑が残り、建設の余地がある。トンカン駅で降り、隣接する車両基地に向かう。下層にMRT北東線、その上にLRTセンカン・プンゴル線の車両基地があるという合理的な建造物だ。駅から見て右側に工場があり、左側には車両の留置線が設けられている。

まず目につくのは、留置線が屋根付きであることだ。この日対応していただいたエンジニアリング本部エンジニアリング統括部基本設計部交通システム基本計画グループ主任の吉岡正隆氏によると、高温による機器故障を防止するために屋根を設けたという。この日もシンガポールは午前中から30度以上という高温に見舞われていたので、この措置には納得した。

乗客急増で2両運転も開始

ラッシュ時には2両編成で運行される(筆者撮影)

続いて工場に足を踏み入れる。2両並んだ車両の先頭部が違うことに気づいた。2両編成での運行を開始したことに合わせた改良だ。沿線の住宅が増えるに従い、2014年には1日平均8.7万人だった両線の乗客数は翌年は9.9万人、2016年には12.7万人と急ピッチで増えているのである。

ホームや線路は当初から長編成に対応してあったが、車両は連結時にも前面の扉を開閉できるよう上下2分割とし、灯火類も横から確認しやすい配置に変更した。25両は単行用として残し、16両を新製、16両を改造で賄っている。変電所の増強、駅での停止用機器の位置変更も行い、昨年からラッシュ時の2両運転が始まった。

車両の脇にはタイヤが並べてあった。タイヤは集電シューと並んで消耗が激しい部品であり、1年に1度の頻度で交換するという。

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