シンガポールで日本製「新交通」が人気のワケ 三菱重工のシステムが空港や市内交通に

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チャンギ空港内のターミナル間を結ぶ「クリスタルムーバー」(筆者撮影)

三菱とボンバルディアとでは軌道の構造が異なる。三菱の案内軌条が軌道左右にあるのに対し、ボンバルディアは中央に案内軌条を置く場合が多い。つまり車両の入れ替えに際しては軌道の構造変更も実施しており、軌道と車両がセットで導入される形となる。

三菱はわが国では東京都のゆりかもめ、埼玉県のニューシャトルなど多くのAGT車両を手掛けるが、それらが5~6両編成なのに対し、チャンギ空港の車両は全長12.55メートルの単行車両だ。空港内交通としては妥当な容量だろう。

空港と都心はMRT(マス・ラピッド・トランジット)と呼ばれる都市高速鉄道が結ぶ。MRTは最初の開業が1987年と新しいが、現在5路線があり、チャンギ国際空港には東西線が乗り入れる。路線を保有しているのは国のLTA(陸上交通庁)で、SMRTトレインズとSBSトランジットの2社が運行を行う上下分離方式だ。車両の製造は川崎重工業、シーメンス、アルストムなど、国籍からしてバラエティに富んでいる。

シンガポールの中心はシンガポール島南部であり、高層ビルが立ち並び、観光地のマーライオンやマリーナベイサンズもここにある。当然ながらMRTの路線網もここを中心に広がっている。

逆に北部はまだ緑が残る場所もあるが、近年はこうした地域でニュータウンの建設が進んでいる。シンガポールは後で紹介する大胆な手法で自動車交通を抑制しており、公共交通整備は必須である。しかしMRTほどのボリュームは不要であることからAGTが導入された。

現地での呼び名は「LRT」

シンガポールのAGTはLRTと呼ばれる。ただし欧米や日本のLRTとは異なり、ライト・ラピッド・トランジットの略となる。MRTの小型軽量版という位置づけだ。本稿でも以下LRTと記す。

まず1999年、MRT南北線チョア・チュー・カン駅を起点とするブキ・パンジャン線が開業し、続いて2003年に北東線センカン駅、2005年に同じ北東線の終点プンゴル駅からの路線が運行を始めた。

ラケット型の路線を持つブキ・パンジャン線はボンバルディア製車両をSMRTトレインズが走らせ、MRTの駅を中心に8の字を描くセンカン線とプンゴル線は三菱製車両をSBSトランジットが運行している。

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