「レッドブル」、異例成長支える"逆転の発想"

老舗の中で新興企業が存在感を増したワケ

レッドブルガールによるサンプリングの姿勢も非常に印象的です。大抵の場合、レッドブルガールは単純にレッドブルを配り回るのではなく、「翼を授かったことはありますか?」という会話付きで渡してくれます。

レッドブルを受け取った人は、その場でレッドブルを飲みながら、レッドブルガールと会話をすることになるわけです。

単純な配布量だけ考えたら、無駄な会話などせずに渡したほうがたくさんの数を配布できるはずです。でも、あえてふたを開けて渡すことで、レッドブルを飲むという「体験」を、その場で、レッドブルカーを見ながら、レッドブルガールと会話をしながらという特別な状況でしてもらうことができるわけです。

これまた、レッドブルが、単純な配布「量」よりも記憶に残る体験の「質」を重視していることの象徴といえると思います。

実はレッドブルが実践しているように逆転の発想での「質」を重視するアプローチを組み合わせることで、より大きな成果を出すことができる可能性があるのです。

古き良き商売の基本に近い考え方

『顧客視点の企業戦略 アンバサダープログラム的思考』(宣伝会議)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ちなみに、こうやって書くと、レッドブルは新しい企業だから、マーケティング手法も画期的で新しいんだ、古い日本企業には難しいんだ、と思い込んでしまう方もいるかもしれませんが、それもまた実はちょっと間違っています。

たとえば、江戸時代には、目立つ格好で飴(あめ)を売り歩いた「飴売」と呼ばれる職業があったそうですが、これはレッドブルガールに近い仕組みと言うことができるかもしれません。レッドブルの「スポーツマーケティング」は、ある意味では相撲のタニマチ的な存在と言うこともできるかもしれません。

実はレッドブルが体現している逆転の発想は、ある意味、古き良き商売の基本に近い考え方かもしれないのです。もちろん、現在ではレッドブルもテレビCMは実施しており、すべてのやり方が逆転の発想の手法というわけではありません。

大企業では広告費や流通網など、既存の資産があるために、ついつい広告を通じて大勢の人たちに届けるという「量」を重視してしまいがちかもしれませんが、実はレッドブルが実践しているように逆転の発想での「質」を重視するアプローチを組み合わせることで、より大きな成果を出すことができる可能性があります。

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