「レッドブル」、異例成長支える"逆転の発想" 老舗の中で新興企業が存在感を増したワケ
そうしたレッドブルのスポーツマーケティングの姿勢を感じるうえで、最も象徴的なのは、「レッドブル・エアレース」でしょう。
レッドブル・エアレースとは「世界最高の飛行技術を持つレースパイロットたちが、最高時速370km、最大重力加速度10Gの中、操縦技術の正確さ、知力、体力、そして精神力の限りを尽くしてタイムを競うFAI(国際航空連盟)が公認する究極の3次元モータースポーツ」。
この大会はレッドブル主導で開催されているもので、「レッドブル・エアレース・ジャパン実行委員会」が協賛を募る形で実施されています。
通常の飲料メーカーであれば、F1のようにすでに実施されている大会に協賛をする形でこういった企画に携わるのが普通だと思いますが、レッドブルは自らこの大会を主導して企画を行い、「翼を授ける」という自らのキャッチフレーズを象徴するような大会の実現に貢献しているわけです。
こうした、F1のようにすでに世界的に認知度の高い大会にスポンサードして自社の知名度を上げようとする「スポーツマーケティング」と、レッドブルのように無名なスポーツや大会を選手たちと共に広げようとする「スポーツマーケティング」の発想が、真逆の立ち位置にあることはよくわかっていただけるのではないかと思います。
記憶に残る体験の「質」を重視
こうしたレッドブルの逆転の発想は、スポーツマーケティングのような大きな話ではなく、レッドブルのサンプリング1つ取っても感じることができます。
皆さんは、レッドブルがサンプリングの際に使用しているレッドブルカーを見掛けたことがあるでしょうか。レッドブルの缶を模したBMW「MINI」とレッドブルガールと一般的に呼ばれる2人組のサンプリングスタッフが、レッドブルのサンプリングの基本です。レッドブル社内では「ウィングスチーム」という名称だということです。
通常飲料のサンプリングというと、駅前などでアルバイトの人たちが一心不乱に缶を配りまくるというのが一般的です。サンプリングにおいて通常重要視されがちなのが「配布数」とその配布コスト。できるだけ低コストに大量に配ろうと思ったら、人通りの多い路上でとにかく大量に配布するのが、配布数だけを考えるといちばん効率的、と考える企業はまだまだ多いのではないでしょうか。
しかし、レッドブルのサンプリングは、そんな大量配布のサンプリングから考えると、これまた逆転の発想に近い存在です。
そもそも、サンプリングのための車がミニという時点で積載量からすると、最もサンプリングに適さない車といえます。数だけ考えたら軽トラやバンのほうがたくさんレッドブルを積めるでしょう。でも、ミニをベースとしたレッドブルカーは、とても印象に残ります。単純な配布「量」よりも記憶に残る体験の「質」を重視していると言ってもいいかもしれません。
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