フランス大統領選を投票率から直前予想する マクロンかルペンか、4候補が大混戦だが…

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また、決選投票が行われる5月7日は日曜日で、翌日の8日は第二次大戦の戦勝記念日でフランスの祝日だ。4月15~17日の復活祭の3連休、4月29日~5月1日のメーデーを挟んだ3連休、5月6~8日の戦勝記念日を挟んだ3連休と、こう立て続けに連休があると出かける気も失せそうなものだが、フランス人の知り合いによれば、そうでもないらしい。

なお、イースター休暇も戦勝記念日も毎年のことで、今回の大統領選に限った話ではないとの指摘もあることだろう。ただ、イースターは「春分を過ぎた最初の満月の次の日曜日」なので、毎年日付が変わる。前回大統領選が行なわれた2012年のイースターは4月8日で、初回投票が行なわれた4月21・22日と重なっていなかった。また、第二次大戦の戦勝記念日は毎年5月8日で今年は月曜日で3連休となるが、2012年は火曜日で連休ではなかった。

フランスにも不在者投票制度があり、積極的な投票意思のある有権者は事前投票を済ませていることは言うまでもない。とは言え、これだけ接戦となると、昨年6月の英国の国民投票がそうだったように、当日の天候や日並びが投票結果に微妙な影響を与える可能性も否定できない。

投票率が低くてもマクロン候補が逃げ切り

投票率が下がった場合も、ルペン候補がマクロン候補を破るのは、かなりのナローパスであると言える。決選投票の組み合わせが両候補となった場合のすべての世論調査が、マクロン候補が50%台後半から60%台前半の支持率で勝利することを示唆している。投票率の低下が投票結果をどの程度左右するかを具体的な数値例でみてみよう。

決選投票でのマクロン候補の支持率を60%、ルペン候補の支持率を40%と仮定し、固定票の多いルペン候補の支持者の投票率が高めに、浮動票の多いマクロン候補の投票率が低めに出るケースを考えてみる。例えば、ルペン支持者の投票率が過去の全国平均を上回る90%に達すると仮定した場合、ルペン票がマクロン票を上回るためには、マクロン支持者の投票率が60%未満にならなければならない。ルペン大統領の誕生を阻止しようとの戦略的な投票が予想されることからも、ルペン候補の勝利には様々なリスク事象が重なる必要がありそうだ。

田中 理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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