バスにはバスで対抗、ドイツ鉄道の大胆戦略 列車の弱点をカバー、今後各国で広がるか

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普段、主に鉄道を利用している筆者の視点から今回のバス旅を評価してみたい。まず、バスということで気になる定時性については、余裕を見たダイヤ設定なのかもしれないが非常に優秀だ。バスの場合、工事や事故など不測の事態により遅延する可能性は鉄道より高いはずだが、その定時性が売り物のはずの鉄道は、最近遅延の話ばかりが目立つ。これは鉄道にとって非常に憂慮すべき事態といえるだろう。

ICバスの2階席。天井は低く、背の高い人には少々窮屈だ(筆者撮影)

次に車内の快適性だ。人によって評価の分かれる部分でもあり、あくまで筆者の主観という前提だが、全般的なスペースに関しては身長180センチメートル以上の筆者からすると圧迫感があり、座席の幅もやや窮屈に感じる。座席の前後間隔も、鉄道車両との比較では狭い。だが、鉄道車両でもフランスのTGVやユーロスターの2等車は、車体が小さくてかなり窮屈なので、比較対象によってはまあまあの居住性と評価できるのではないだろうか。

車内サービスについては、Wi-Fiを備えている点は二重丸といえるだろう。路線によってはつながりにくいという声もあるようだが、筆者が利用したニュルンベルク―プラハ間では、つねに安定した電波でストレスなく利用できた。車内のミニバー(売店)はメニュー内容が乏しすぎて利用しなかったが、車内で飲食類を販売する供食設備があるという点は評価すべきだ。

「バスにはバスで対抗」が増えるか

バス特有の揺れや振動などは、感じ方に個人差があり、さまざまな要因で変化するものだが、人によっては乗り物酔いをする可能性があるかもしれない。筆者が乗車した当日も、車線変更でほかの車が横切った際などにブレーキや急なハンドル操作があり、バスが2階建てで背が高いこともあって、車体がふらつく場面があった。

車内での移動が制約される点などの課題はあるが、ドイツ鉄道が運行する高速路線バス「ICバス」が快適な乗り心地であり、定時性などの面でも交通機関として有効であることは間違いない。次々と攻め入る民間バス会社に対し、鉄道では対抗が難しい区間をカバーする1つの手段としてこの高速路線バスは有効だといえる。欧州域内は高速道路網の整備も進んでいることから、今後も鉄道とのすみ分けにより、「鉄道会社が運行する高速バス」が路線を増やしていくことも考えられそうだ。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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