JR東西の豪華列車、結局どっちがスゴいのか 価格帯の豊富さは西、予約倍率は東に軍配

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四季島の3泊4日コース、瑞風の2泊3日コース、ともに1日1回途中下車する。

四季島は日光、函館、青森、新潟で、瑞風は岡山、松江、東浜で下車して観光する。JR東日本エリアなら松島や平泉、JR西日本エリアなら萩、尾道、厳島神社といった有名な観光地もあるが、これらはほかのコースに組み込まれている。

エリア内の人気スポットをあますところなく訪れる従来の観光旅行のイメージとは大きく違う。高額なクルーズトレインの旅を楽しみたいという人は、ありきたりの観光地では満足できず、新しい観光を求めているからかもしれない。

四季島のレストラン(撮影:尾形文繁)

実は、クルーズトレインのもう1つの狙いがそこにある。クルーズトレインを通じた地域活性化への貢献だ。

瑞風が主に運行するのは中国地方、四季島は北海道、関東なども行程に含まれるあるが、メインは東北地方だ。四季島や瑞風が運行を開始すれば、クルーズトレインの旅がテレビや雑誌で紹介されるようになる。地元には格好のPRの機会だ。

観光庁の調査によれば、2015年の日本全体に占める都道府県別延べ宿泊者数の割合は東北地方が8.5%、中国地方が5.1%だった。同10.7%の九州地方よりも低いという結果になった。四季島や瑞風の登場で、東北地方や中国地方の観光知名度を引き上げ、どこまで観光客を呼び込めるか。

地域に客を呼び寄せるためには、「観光素材をもっと育てないといけない」と、JR東日本の冨田哲郎社長は語っている。「単に自然だとか、温泉、食べ物というのではなく、その地にある文化、伝統芸能、産業、暮らしそのものが観光素材になる」(冨田社長)。

東北の情報発信は決定的に足りない

外国人旅行者の呼び込みという点では、東北地方も中国地方も切実な問題を抱えている。先の調査で、2015年に日本を訪問した外国人のうち、東北地方に宿泊したのはわずか0.9%にすぎなかった。中国地方に宿泊した人は1.7%いたが、北海道の8.5%、九州の8.4%と比べると大きく見劣りする。

原因ははっきりしている。情報発信力が不足しているのだ。日本を訪れる外国人観光客向けガイドブックの定番、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』は、京都だけで50ページを使って解説しているのに対し、東北地方に関する記述はわずか22ページ。中国地方の記述も41ページにとどまる。事前の情報が少ないのでは、東北地方や中国地方を訪れたいと考える外国人が少ないのも無理はない。

瑞風のレストラン(撮影:尾形文繁)

クルーズトレインの登場で外国人が東北地方や中国地方を訪れるようになるほど単純なものではないにせよ、ななつ星は「Seven Stars」と呼ばれ、海外メディアでもしばしば紹介されるようになっており、海外申し込みの平均倍率は2倍を超え、海外でも”予約のとれない列車”になった。

四季島や瑞風もななつ星同様に海外に紹介される可能性は高いだろう。それを、東北地方や中国地方の魅力発信につなげたいところだ。

沿線の魅力を世界に発信するという点では、外国人訪問率の低い東北地方を走る四季島のほうがより高い使命を背負っている。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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