結局不要?残念すぎるマイナンバーのその後 熊本地震でも役に立たず、自治体財政圧迫も
このうち、多くの人がその存在を身近に感じたのは、今年2月から行われた税の確定申告だ。ツイッターなどのSNSでは「個人番号を書類に記載しないと税務署は受理しないのか?」との質問が飛び交った。記載なしで臨んだところ、受理を拒否されたとの報告もある。ところが、記載をしたらしたで、個人番号通知カードの提出を求められ、どちらにしても、手続きの簡素化とはほど遠い実態が明らかとなったのだ。
私の居住地、横浜市役所は「個人番号がなくても行政手続きはできます」と言っていたが、こと納税に関しては、個人番号の提供は実質義務になっている。
一方で、個人番号カードの所持は義務ではない。そのためか、国民の多くは自治体から「個人番号通知カード」を送られてはいるが、運用開始から1年たっても、個人番号カードの交付率は約8%にすぎない。早くも制度破綻が囁かれているが、その原因は利便性を感じられないからだ。
熊本地震でも役に立たなかったマイナンバー
例えば、昨年4月の熊本地震で被災した熊本と大分両県の41市町村で、個人番号カードで迅速な生活再建をした事例は皆無。注視すべきは、熊本県南阿蘇村の職員が地元紙の取材に「マイナンバーを活用しなくても避難者は把握できる」と、マイナンバーが無用の長物であると答えている点だ。
また私事だが、私は母から、過去に暮らした数か所の町からの戸籍謄本の取得を任された。総務省のHPは、マイナンバーで、2016年度にコンビニなどで約6000万人が公的証明書を取得できると謳っている。そこで昨年末、母所有の個人番号カードを使い、コンビニか役所で、戸籍謄本の取得が可能かどうか尋ねると、役所は「できない」と回答した。そのシステムが未完であるから、と。
同時に、システムがあったとしても、自治体の財政を圧迫させている事例も報告されている。
福島県いわき市の狩野光昭市議会議員は、今年2月、議会でマイナンバーへの反対討論を行った(要約)。
「いわき市での個人番号カードの交付率は6・6%にすぎません。’17年度いわき市一般会計予算でのマイナンバー関連事業費は約1億円(うち、市の一般財源からの支出は約4000万円)。このうち、個人番号カードによるコンビニでの証明書交付事業費は約2836万円(同、約2300万円)です。そのコンビニでの証明書発行枚数は本年1月末現在で470件なので、1枚あたり6万340円となります」
これは誰が見ても、行政の手続きの簡素化以前に、税金の無駄遣いだ。だから狩野議員はこう強調する。
「マイナンバーの関連財源を市民が求める医療・介護・教育・福祉サービスなどの社会関係サービスに配分する必要があると考えます」
これはおそらく多くの自治体で起きている事案だ。