フリーゲージトレイン「試乗」で見えた問題点 2022年開業に向け車両の検証作業は佳境に

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
軌間変換装置を通過中の軌間可変台車。前後の軸受部分でスライドストッパ受(赤い部品)の位置が微妙に異なっているのがわかるだろうか(撮影:久保田敦)

ところが、まだ約3万kmしか走行していなかった11月29日、車軸とすべり軸受の接触部に微細な摩耗痕の発生が確認され、翌日から試験は休止された。そして約2年を費やして原因究明と不具合対策が施され、昨2016年12月3日、改めて検証走行試験が始められた。長期耐久走行試験に移行する前段階として検証する位置づけである。

こうして4カ月弱にわたる試験走行を行い、3万kmを超える段階となった。今後のスケジュールから6月ごろには検証結果を出さねばならないため、実車走行はいったん切り上げる。その最終段階となったことから、2017年3月25日、報道関係者向けに公開されたのだ。検証走行は翌日26日が最終日となり、その後は台車を鉄道総合技術研究所やメーカーに運び込み、徹底的な検証作業を行う。

日本で最初のFGTは、1998年に誕生した。日本鉄道建設公団が運輸省(現国土交通省)からの全額国庫助成事業として全体の計画を策定・管理し、具体的な技術開発は鉄道総合技術研究所(鉄道総研)が受託する方式により1次車が開発・製造された。当初は車輪直接駆動・独立車輪(DDM)方式で考えられたが、ネックとなる点もあり、並行して研究するために中間車には平行カルダン方式を採用した。

3次車は営業を想定

この1次車は当初、車両としての籍を持たず、保線機械と同様で運転には線路閉鎖が必要だった。そのため高速耐久走行試験を自在に行うため、アメリカ、コロラド州のプエブロ試験線に運び込み、約2年半の走行試験を行った。

FGTは、新幹線の速達効果を広く在来線沿線に波及させられる利点に各地から注目が集まったが、当時は具体的な導入線区が未定だったため、2002年の2次車開発着手に際しては、導入可能性が高いJR西日本、JR四国、JR九州、および鉄道総研、メーカー等計12法人で構成するフリーゲージトレイン技術研究組合が結成された。鉄道公団も行政改革により2003年に鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)となった。こうした経緯から、2次車は鉄道・運輸機構が全体を統括、具体的な開発作業はFGT組合が担う形となり、2007年に竣工している。なお、2次車以降、台車方式は車輪直接駆動・独立車輪方式を止めた。

その後、一般に長崎ルートと呼ばれる九州新幹線西九州ルートの武雄温泉―長崎間が2012年にフル規格で着工認可されて導入線区が明確になり、従来の組合に代わって営業主体と目されるJR九州が役割を引き継ぐ(組合は解散)こととなった。JR九州がかかわった3次車は、2次車の仕様を改良した台車を採用し、営業を想定したプロトタイプとして2014年に竣工、九州内で試験が展開されている。

次ページFGT試験の何が問題だったのか
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事