従来型の病院は30年後までに消えてなくなる 「負のオーラ」出まくりの病院をどう変えるか
松田:海外の「子ども病院」を視察したことがありますが、子どもたちが楽しめる空間になっているケースは少なくありません。
――たとえば、ロンドンにある「ザ・チルドレンズホスピタル・アット・ザ・ロイヤル・ロンドン」は、新館を建てる際にはアーティストを何十人も招集し、病院内に彼らの作品を置いたり、毎日ピエロに扮したエンターテイナーを巡回させたりして、子どもが楽しめる空間をつくっています。
木下:こういう病院なら、外出が禁止されていても楽しく過ごせるし、隔離されているという感じも受けないですよね。
野尻:これからの日本は病院不足、医師不足、看護師不足が現実のものになります。570兆円ある公共不動産のうち、有効活用されていない施設を病院にリノベーションするということはできないんでしょうかね?
馬場:廊下の幅なども決まりがあるので、どんな施設でもというわけにはいかないでしょうけど、ホテルをリノベーションして病院に、というのはアリじゃないですかね。
従来型の病院と違う新しいコミュニティづくりが課題に
孫:いや、僕は30年先には、病院は消滅していると思いますね。
木下:大胆な予言ですね。
孫:そもそも病院って、健康な医師や看護師がいるところに病気になっている患者さんが来ることになっている。この関係って、本来は逆であるべきじゃないですか? AI(人工知能)やロボット技術の進化で、その関係を変えることができるようになります。そうなれば人間が診るよりも正確にセンシングできるようになるし、家に居ながらにして、最新で最高の医療環境を享受できるようになります。
とはいえ、人は病気にはなる。そのときに患者さんの孤独感や看病する家族の心労をケアするためのコミュニティをどうつくっていくかという課題が出てくると思います。
木下:日本の医療問題における高齢者の医療費上昇要因の一つとして、高齢者の孤独な環境によって生じる運動不足問題があります。たとえば大阪・大東市では「元気でまっせ体操」という体操を高齢者に推奨していますが、これを地域内の様々な拠点で高齢者の方々の孤独化を防ぎ、さらに積極的な運動促進を行ったところ、健康増進効果が現れ、結果として市の社会保障予算が年間数億円も減っています。
孫:病院とは違う概念の、ちょっと具合が悪くなった人が体を動かしたりして楽しく過ごせる場所をつくり出せれば、高齢者の医療問題はかなり解決できますね。
野尻:徳島県の上勝町は、全国的にも指折りの高齢化が進んだ地域なんですが、お年寄りに日本料理の「つまもの」に使う葉っぱを採取してもらうビジネスを立ち上げたところ、これが高齢者に生きがいと運動の機会を提供することになりました。その結果、地域の病院や老人ホームが潰れ、医療コストもグンと下がりましたよね。
孫:それが高齢者の医療問題を解決する正しい方法でしょうね。
木下:病院をどうするかというより、その「前段階」をどうするかという発想ですね。
馬場:さらに「病院の次」というべきカテゴリーをどう整えていくか。そこは僕らが提案するのにふさわしい部分だと思う。引き続き考えていきましょう。
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