中野:米国の場合、経営者の仕事はプロフェッショナリズムの世界ですよね。だから、ある程度、金銭的な対価を追求する面があるのですが、日本の場合は違いますよね。プロというよりも、社内出世した末に待っているゴールみたいなものが社長です。だから、金銭とは違う側面に価値を見いだそうとするのではないでしょうか。これも善しあしですが、だから日本企業には、なかなかプロ経営者が根付かないのだと思います。
藤野:もう少し、社会が流動化する必要がありますね。経営トップだけでなく、それ以外の人も、もっと流動化しないとダメだと思います。プロ経営者が成り立つのは、外部人材と内部人材が交流するからです。
その交流がまったくない組織で、経営者だけ外部から招聘しても、うまくいくはずがありません。経営者以外の人たちも外部人材と内部人材の交流を積極的に行うからこそ、プロ経営者を自然体で受け入れられるのではないでしょうか。
「働き方改革」は、時短がすべてではない
渋澤:そこが本当の意味での働き方改革なのではないでしょうか。最近の働き方改革に関する論調を見ていると、どうも労働時間の短縮にばかり意識が向いているような気がするのですが、働き方改革は時短がすべてではないはずです。もちろん、時短も大事ですが、それと同時に、働くことの質の問題も追究しなければなりません。多くの日本企業、とりわけ大企業の場合、今でも終身雇用が前提にあって、労働組合が社員を守っていることが多いわけですが、もっと個々人の働きがいみたいなものを、大事にしていきたいですね。
藤野:今、雇用情勢はすごくタイトじゃないですか。それに30代以下の世代は、もはや終身雇用制度を前提にはしていないと思います。だから、今まで以上に働きやすい企業に、人材が流れていくでしょう。だから、働き方改革は、次世代にこそ重要なものだと思います。
中野:確かに、今の働き方改革は、方向性がちょっと間違っているような感はありますね。たとえばプレミアムフライデーがスタートしたじゃないですか。あれが、本当の意味での働き方改革の一環だとは、とても思えないのです。詩人のユウェナリスは、古代ローマ帝国の世相について、「パンとサーカス」と揶揄したわけですが、まさに食糧と娯楽によって、事の本質が見えなくなっていることの典型です。単に労働時間を減らしたから、人々の人生が豊かになるわけではありません。渋澤さんがおっしゃったように、働きがいはとても大事ですね。
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