ホワイトカラーでもロボットが同僚になる日 工場からオフィスへ!RPAとは何か
現在販売されているデジタルロボットの多くは「ルールベース」で動作している。ルールベースというのは、「人間が事前に決めたルールに従い動作する」ことを意味し、そのため、デジタルロボットで効率化できるのは定型業務が中心となる。筆者らはデジタルロボットの導入を検討されているお客様と話す機会も多いが、お客様からは「デジタルロボット単体では業務の効率化に限界がある」と指摘されることが増えている。
たとえば交際費の支出が妥当であるかを判断する業務を考えてみよう。システムから情報を取得する部分、もしくは情報を登録する部分はルールベースのロボットで簡単に自動化できる。このときにシステムが複数存在しても問題はない。交際費を請求するときに必要な書類がすべてそろっているかの確認も、ルールベースで実現できる。しかし、領収書に書かれた表を理解し支出の妥当性を判断する作業や、社員が記述した支出理由を参考に交際費の支出が妥当であるかを判断する作業はルールベースでの実現は難しく、デジタルロボットだけでは解決できない場合が多い。
AIを活用することで、デジタルロボットでは実現が難しい部分を解決できるのがベストであるが、実際はそれほど簡単ではない。AIは一定の割合で間違った判断をしてしまうため、正確性が重視される業務では利用が難しい。そこでAIを使い人間の業務をサポートするという発想が出てくる。今回の例では、支出の妥当性を判断するときに過去の判断例をAIが表示して事務員を支援するなどの使い方が考えられる。NTTデータでも、従来は人間が対応していた見積もりデータを集約して次年度の購買計画を立案する業務を、AIにより80%程度効率化している(誤解がないように正確にいうと、本取り組みではデジタルロボットは利用していない)。
AIは人の仕事を奪うのか
オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授は、論文「雇用の未来」の中で、20年後には米国雇用の47%がコンピュータに代替されると公表している。今後は技術革新により生産性は向上するが、雇用は伸びない「グレートデカップリング」の懸念もある。
AIやデジタルロボットによる業務効率化で失業リスクが高まることは否定できないだろう。しかし、現状の技術レベルでは、失業よりも、導入しないことによる国際競争力の低下を心配したほうがよいと考えられる。RPAを推進し、社員を付加価値の低い仕事から解放できれば、業務改善やイノベーションに従事する時間を増やすことも可能だ。
地方では人口減少で労働力不足が深刻化している。また、中小企業では、やはり人口減で派遣社員の採用が難しくなっていると聞く。海外へのオフショアでは今後も賃金上昇が続くため、定期的に発注先を見直す必要がある。また、海外の政情不安や情報流出リスクにも備える必要がある。このように考えると、過度に失業リスクを恐れずにしっかりと業務の自動化を推進したほうが、日本全体ではよい方向に進むともいえるのである。
デジタルロボットは現場主導で業務改善を推進できる貴重なツールである。現在はまだAIやデジタルロボットの導入が始まったばかりであるが、将来的にはより高度なテクノロジーの導入も検討されていくだろう。今後は、財務部や購買部などのバックオフィスであっても一定レベルの技術を理解し、自ら改善する努力が求められる。少しずつだが確実に業務のグローバル化が進むのと同じで、テクノロジーの活用も少しずつではあるが確実に進展していくと思われる。
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