帝人・大八木会長、「好奇心」で切り拓く未来 「医薬」を主力事業に育てた立役者が語る
キーワードを基に様々なジャンルのフロントランナーからビジネスのヒントを聞く「飛躍のアルゴリズム」。今回は帝人・大八木成男会長。企業を取り巻く環境が超スピードで変化し続ける今、“畑違い”の事業を主力事業に導いた手腕やリーダーシップの在り方を聞く。
大八木氏は、1971年、帝人に入社。1975年にアメリカの大学院に留学。1976年、帰国直後から医薬事業に発令。2008年、帝人で初めて繊維部門以外からの社長に就任、2014年、会長に就任。2016年からは経済同友会の副代表幹事としても活動。
新規事業実現のために
1つ目のキーワードは「アメリカ留学先で『医薬事業』に発令。『え? そんな事業あったの?』」
帝人というと繊維の会社のイメージが強いが、実は今、医薬などの「ヘルスケア」事業が営業利益の約4割を占めている。しかし、大八木氏が当時、医薬の担当者として発令された時、帝人の医薬事業は着手したばかりだった。
――その時の心境は?
40年前の話になります。当時、ボストンの郊外に郵便物で人事発令が届く時代でありますから、医薬事業をやっているということも知らない中で、そういう人事発令が手元に届いて、「えっ」っていう驚きと「そんな事業あったの?」という素直な感覚ですね。
発令というのは、ビジネスマンにとっては大変大きなショッキングな出来事も起きるわけで、やはりもうちょっと丁寧な「あなたに対する期待は何か」という情報をつけて、本来は出すべきものなんでしょうね。
――どういった意図で発令されたか、わからないままだったけれども、その後はどのような認識だった。
戻りましてから、元の私の上司が部長でおりましたんで、そこで一安心ということですけど、立ち上がっていない事業ですから、あとは図書館に通い詰めて勉強するという日々でしたね。