インド・中国の共存が世界の安定をもたらす

両国政府は公式的には両国の友好関係を強調している。一部の通商問題の専門家は、現在のような急成長が続けば、この二つの巨大市場は経済的に一体化して“チャインディア”になると主張している。05年に中国の温家宝首相が訪印し、5カ年戦略協力条約を含む11の協定に調印している。温首相は、中国はインドの国連安全保障理事会の常任理事国就任を支持すると発言している。シン首相も「インドと中国は共同して世界をつくり替えることができる」と語っている。

最近の両国は、国境紛争をめぐって武力衝突があった62年以降続いていた敵対関係から大幅に改善している。ただ表面的には友好的だが、本音のところでは両国は不安感にさいなまれている。それは特にインドで顕著である。中国のGDPはインドの3倍あり、成長率も高く、防衛予算は昨年約18%も増加した。国境紛争は依然として未解決で、両国はミャンマーなど隣国に対する影響力をめぐって競い合っている。

胡錦濤国家首席が訪日の際に両国の良好な関係を口にしたにもかかわらず、日本は中国の台頭に懸念を抱いている。そのため日本は対印援助と貿易を増やしている。また、昨年、米国は日本、インド、オーストラリアの4カ国による海上軍事演習を提案した。しかし、オーストラリアのケビン・ラッド首相は軍事演習に同国の海軍が参加することを拒否した。ラッド首相は、中国の台頭に対する正しい対応は中国を国際的な協定の枠の中に組み込むことであると信じているからだ。これは賢明な発想である。ロバート・ゼーリック世界銀行総裁も国務副長官時代に、米国は中国を国際システムの“責任ある当事者”とするように務めるべきであると主張している。

中国を孤立させる試みは間違いで、米中関係の改善を通して中国が政策を変更できる国際情勢をつくり上げることが必要である。状況に適切に対応すれば、中国とインドが同時に台頭することは国際的に好ましいことである。

ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授
1937年生まれ。64年、ハーバード大学大学院博士課程修了。政治学博士。カーター政権国務次官代理、クリントン政権国防次官補を歴任。ハーバード大学ケネディ行政大学院学長などを経て、現在同大学特別功労教授。『ソフト・パワー』など著書多数。

(見出し写真:JMPA)

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