トランプの「独がユーロ操作」はこじつけだ ドイツ巨額黒字にまつわる3つのウソとは?

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第2の間違いは、政治家や中央銀行が為替の実勢レートを設定できるという考え方にある。先進国では、為替レートは実体経済と金融システムの状態によって形成される。スイス国立銀行が数年前に同国通貨スイスフランの上昇を止められなかったように、為替レートを当局の直接介入で定めることは不可能だ。

実際、米財務省は1990年代に通貨市場介入を断念した。ECB(欧州中央銀行)が為替介入を試みたのも、2000年の非常に短い期間の1回だけだ。

FRB(米連邦準備制度理事会)やECBが通貨安を狙って独自政策を追求しているとの批判は、為替変動が国内のインフレや輸出、経済成長に限定的な影響しか与えられないという事実を見逃している。

第3の間違いは、一国の経常収支が輸出の競争力を反映するという、ドイツ国内でも根強い考え方だ。実際には、国の対外収支を決める主因は輸出ではない。

以上の3点が示すように、ドイツの対外黒字はユーロ相場やドイツの輸出の産物ではない。現在ユーロ相場は弱すぎるとはいえず、ドイツの輸出は過剰ではない。

元凶は輸出ではなく輸入にある

問題はむしろ投資ギャップによってドイツの輸入が少なすぎる点にある。

ドイツの公共投資率は先進国中で最低水準にある。公共投資の半分を担う自治体が必要とされるにもかかわらず、行っていない公共投資の規模は現在、GDPの4.5%に当たる総額1360億ユーロに達する。学校の建物だけでも350億ユーロの補修費用が必要なのだ。

しかし、ドイツ企業の海外投資熱が高いため、老朽化したストックに対する民間投資が後回しにされている。

この格差は政策の失敗の産物だ。これまで非貿易サービス部門では、保護主義的な政策が取られてきたのだ。IMF(国際通貨基金)や欧州委員会、そしてOECD(経済協力開発機構)は、ドイツがこの部門で規制緩和や既得権益打破、競争促進を図るよう働きかけてきた。しかしドイツの非貿易サービス部門では賃金や生産性、投資が低いままだ。

ドイツの経常収支をめぐる国際的な議論は、同国のサービス部門を自由化するとともに、国内投資への障壁を取り除くための措置に焦点を合わせるべきだろう。

週刊東洋経済3月25日号

マルセル・フラッシャー ドイツ経済研究所所長

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マルセル・フラッシャー / Marcel Fratzscher

ECB(欧州中央銀行)国際政策分析部門の元トップ。独フンボルト大学教授。専門はマクロ経済と金融

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