子持ち女性ほど「妊婦いじめ」がキツい矛盾 共通項が多い相手ほど攻撃対象になりやすい

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つわりにしても、症状や程度は場合によってさまざまです。同じ妊娠経験者といっても、状況はまったく違う可能性があります。それにもかかわらず、「自分はこうやってきたのに、あなたはできないの?」と違いを指摘してくるのです。理解者だと思っていた相手からの、こうした言動は、言われた本人にとっては、大きな打撃となります。じわじわと精神的に追い込まれて、仕事を辞めざるをえない状況になる人もいます。

私たちは、環境や立場など、共通点が多ければ多い相手にほど、些細なことで気持ちが揺れる傾向にあります。たとえば、外国の有名な人が、何億円も稼いだという話を聞いて「すごいな」とは思っても、「夜も眠れないくらいに嫉妬する」ということはないと思います。一方で、同期が上司に褒められた現場を見た日には、「夜も眠れないくらい嫉妬する」ということがあるのです。

「ママ友いじめ」がその典型例です。生活環境、子ども性別や年齢、通わせている学校、習いごと……。共通項が多い中では、ほんの少しの違いが許せなくなり、攻撃対象になります。

同様の論理で、マタニティハラスメントに関しても、子持ちの女性ほど注意が必要なのです。同じ環境で仕事をしていると、相手との価値観が「同じ」と誤認する傾向が出てきます。ただ、仕事に対する意識は、以前よりも多様化しています。

同じ職場で仕事をしていると、ついつい相手との価値観まで同じだと誤解しがちですが、そうではありません。お互いにわかり合えると安易に思い込まずに、意思疎通を図ることが必要です。

女性をいっしょくたに「女性活躍推進」と言っても……

同じ女性であっても、結婚、出産する、育児における事情がそれぞれ異なることに加え、それぞれの選択肢自体が多様化しています。さらに、仕事に対する価値観となればさらに細分化されます。バリバリ働いて実績を積み、ポジションを手に入れたいという人がいる一方で、とりあえず社会とつながっていればそれでよい、子ども中心に考えたいという人もいます。積極的に仕事はしたくないけれど、経済的な理由で働かざるをえない人もいます。挙げればきりがありません。

その女性たちをいっしょくたにして「女性活躍推進」といっても、うまくいくはずがないのです。

現状では「同じ給料なのに、私ばかりに負担がかかっている」「仕事に対する意識が低すぎる人と働きたくない」「熱意についていかれない」などと、女性同士でお互いに不満を溜め込みやすい状態になっています。その結果、足を引っ張り合うことになります。

女性管理職を増やしたくても、本人に断られてしまい困っている人事の話を聞くこともしばしばです。もっと目に見える形での働き方の多様化と評価制度(収入でもポジションでも)が体系化できないと、女性の活躍推進は進まないと思います。早急に働き方と報酬の細分化を行うことが課題だと感じます。

一方、妊娠、出産、育児等の立場における権利を振りかざし「配慮してもらうのが当たり前」という態度で、トラブルを起こすケースもあります。「時短勤務中だから」と、仕事を無責任に放棄したり、負担をかけている周りへの配慮を欠いたりするパターンです。

周囲の人は、内心腹が立っても、何も言えずにストレスを溜め込むことになります。こうしたことが続くと何かの折に、嫌味のひとつも言いたくなってしまうのもうなずけます。権利を行使する側の配慮も必要です。

女性は、男性よりも調和を大切にするといわれています。少しの違いを敏感に感じ取り、仲間外れにされることを基本的には嫌います。しかし、昨今では自立した意識を持つ人も増えてきています。同じ女性だからといってわかり合えると期待することをあらためて見直し、対話を怠らずに、つねに折り合い地点を探っていきましょう。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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