「AI乗合バス」は交通難民の救世主となるか 高齢化率33%の函館市で実証実験、実用化へ

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3月9日、NTTドコモとともに都内で行った発表会。一番左がはこだて未来大学の松原仁教授、その隣が中島秀之名誉学長(撮影:大澤誠)

函館の実証実験がタクシーだったように、このSAVによる完全自動配車は既存のタクシー配車の自動化や、「乗り合いタクシー」の実現も可能だ。さらに言えば、米UBERのようなカーシェアの仕組みも、SAVで運用することができるという。さらに、「乗り合いタクシー、バス、カーシェアをSAVで全て配車することも可能だ」と松原教授は断言する。

NTTドコモと共同開発

先述の通り、中島教授のシミュレーションによれば、人口密集地ほど乗車効率が上がる。そうだとすれば、AIバスを導入して最も効率が上がるのは実は東京都である。

ただ「東京は公共交通機関が発達しているので、乗車需要と交通機関の供給のギャップが少ない」(松原教授)。やはり公共交通機関に対する不満が多いのは函館市のような地方の都市部だと、松原教授はにらんでいる。

「路線バスは9割が赤字」と言われ、路線の縮小・廃止が全国各地で相次いでいる。バス離れが起きている一方、バス以外に交通手段のない高齢者は交通難民と化している。未来シェアのAIバスは、こうした負の連鎖を止めるきっかけになる可能性がある。

3月9日にはAIバスの実現に向けて、NTTドコモと共同開発で基本合意した。ドコモのリアルタイム移動需要予測技術を用いて、2018年度中のAIバス実現を目指す。最初にサービスを開始する都市は未定だが、「函館市のような人口20万から30万人規模の地方都市がいい」と松原教授は言う。

究極的には、ドコモの需要予測技術を応用することで、スマホで呼ばなくても路線バスが需要を予測してやってくる未来の実現を目指す。ドコモと組むことでAIバスはどこまで進化するだろうか。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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