【洞爺湖サミットに何を期待するか】(最終回)G8サミットに今後何を期待するか

●政治問題討議の効果にも疑問

 政治問題についてのG8諸国の関心にはばらつきが目立ち、首脳宣言で合意したことへのコミットメントの度合いも疑われ始めている。日本以外の諸国は、核拡散についてはイラン問題に関心を寄せ、北朝鮮問題はほとんど議論もしないと言う状況であったらしい。激しい議論の末7月9日採択したジンバブエに関するG8共同声明では、「危機の迅速な解決のためアフリカ連合(AU)、国連その他の機関と協力する」「国連事務総長特使の任命」「暴力に対して責任を有する個々人に対する資金的およびその他の措置を導入する」などに合意していたが、その2日後の国連安保理ではその合意当事者のロシアは中国と共に、ジンバブエ制裁決議案を拒否権で廃案とした。また重要な政治問題化した温暖化ガス排出規制に合意したアメリカが、長期目標に関する合意採択の2日後に、ホワイトハウスから「排出規制は経済的負担、雇用喪失を招く」として反対声明を出したことは世界を驚かせた。

●G8サミットの将来はどうなるのか

 威光と実質的役割の低下傾向が明らかとなったG8の将来については、今回2点注目すべきことがあった。一つは「G8拡大論」が洞爺湖で議論されたことである。本年初め頃からフランスは、G8に中、印、ブラジル、メキシコ、南アの5ヶ国を加えG13とすることを提案し、英国も検討に値するとの立場をとってきたが、今回フランスがこの議題を提案した時、英は同調、アメリカ、日本、独は時期尚早と反対を表明したと報じられている。ブラジル、印、南アは既にこの提案に前向きであることは以前から知られていたが、中国とメキシコの反応は不明である。拡大するにしても、G13で止めるのか、G16あるいはカナダが以前から提案しているようにG20とするのかそう簡単には決まらないだろう。実効性との兼ね合いや、拡大後のアイデンティティの危機の問題もある。いずれにせよ日・米両国が強く反対する限りその方向への変革はまずありえない。

 もう一つ注目されることは、G8の宣言がそれぞれの主要議題に関し、国連、世銀、IMF、ILO、WHO、IAEA、WTO、OECD、IEA(国際エネルギー機関)、AU、EUなどの国際機構との連携を重要視していることである。この他、新興ドナー国、民間部門、NGOとの協働を重視しているパラグラフも散見され、国際機関に関しては、より効果的に役割を果たすための改革と適応にG8としても取り組むと宣言している。

 G8拡大は近い将来にはありえないと思われるが、その一方で非G8アクターとの連携は今後ますます発展する傾向にある。20世紀には重要な役割を果たした寡頭政治的少数国家によるグローバル・ガバナンスの有用性には限界がある。国家によるタテ構造のガバナンスは、前世紀を通じほとんど主流であったが、トップダウンにボトムアップの政策プロセスが加わったものに今日では変容しつつある。この新しい民主的タテ構造に加え、すべての非国家アクターの参加貢献による、ヨコひろがりのネットワーク型ガバナンスとの複合的シナジーのかたちが、G8発展の地平に見え始めているのはよろこばしいことだ。(終)
(写真)日本雑誌協会

功刀達朗(くぬぎ・たつろう)
国連大学高等研究所客員教授
国際協力研究会代表
東京大学中退、米国コーネル大学で修士、コロンビア大学で博士号。国連法務部、中東PKO上級法律顧問を経て、外務省ジュネーブ代表部公使、フランクフルト総領事、国連事務次長補、カンボジア人道援助担当事務総長特別代表、国連人口基金事務次長を歴任。90年国際基督教大教授、のち同大COE客員教授。編著に『国際協力』(95)、Codes of Conduct for Partnership in Governance (99)、『国際NGOが世界を変える』(06)、『国連と地球市民社会の新しい地平』(06)、『社会的責任の時代』(08)など。
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