日本株は15日のオランダ下院選後どうなるか マーケットが大きく動く可能性はあるのか

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もう一つの有力な様子見材料であるFOMCを確認しよう。米連邦準備制度理事会(FRB)は、14-15日開催のFOMCで0.25ポイントの追加利上げを決定する可能性が高い。FRBのイエレン議長やフィッシャー副議長、ブレイナード理事などの金融当局者は3月利上げに前向きな見解を何度も示しており、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が算出する米金利引き上げの時期をめぐる数値(Fed Watch)でも、「3月利上げ」の確率は90%を超えた。追加利上げそのものは、ほぼ完全に当面のマーケットに織り込まれたといえよう。

利上げがあっても、ドル高になりにくい?

問題は利上げ決定後の話だ。利上げがあったとして、ドル・円相場は小幅ドル高となる可能性はあるものの、市場予想の大勢を占める「年内3回の利上げ見通し」が維持された場合、利益確定を狙ったドル売りが増えることから、ドルの上値はやや重くなる展開が見込まれる。

つまり、今回のFOMCでは、利上げの有無よりも、今後の追加利上げペースを含む政策見通しについて、FRBが強気な姿勢を示すかが焦点となる。仮に「2017年4回利上げ」を示唆するような声明がでれば、米10年債利回りは上昇し、ドル買いが加速しそうだが、10日に発表された2月米雇用統計で平均時給の伸びは市場予想とほぼ一致したことから、2017年における利上げペース加速の思惑は後退している。トランプ大統領が利上げに消極的な姿勢を示していることも考慮すると、「2017年4回利上げ」のハードルはかなり高いといえよう。

日本の金融政策に関しても、少しだけふれておきたい。日本銀行は15-16日開催の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を賛成多数で決定する見込みだ。日本銀行の雨宮理事は9日、国会答弁で「物価上昇目標の2%まで距離があるため、現在の方針で強力な金融緩和を推進すべきであり、長期金利目標の引き上げは適正でない」と述べている。日銀は長期金利の目標水準を変更せず、金融緩和政策を堅持すると予想されていることから、為替、株式市場ではさほど手掛かり材料視されないとの見方が多い。

日経平均が2万円をターゲットとした動きをみせるには、為替市場での円安ドル高が必要だが、急速に米3月利上げを織り込んだ状況下、円安ドル高進行のハードルは高い。米国の雇用は堅調だが、2月の米雇用統計は、「2017年4回利上げ」の機運を後押しする内容とまではいかなかった。日経平均が一段高を試すには現状は材料不足で、少々ハードルが高い地合いといえよう。下値を警戒といった状況ではないものの、上値も重い膠着相場は継続するとみる。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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