本気で炭素離れするなら突破口は宇宙発電だけだ−−茅陽一・地球環境産業技術研究所長

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 風力発電のウエートが高いドイツは強力な振興策を取っていて、風力、太陽光発電でできた電力を高く買うことを電力会社に義務づけている。それで風力発電が2000万キロワットを超える規模まで拡大した。だが、風力は出力変動がかなり大きいので、どうやって電力系統の中で需給調整するかという問題が出てきた。

もともとドイツの場合は地続きの他国から供給を受けられるという利点がある。さらに、石炭火力を調整用に何基か動かしている。しかし、これ以上風力が増えたら、今までのようにはいかないだろう。

太陽光発電や風力発電は、それ自身の発電コストが高いというだけではなくて、一種の外部コストとして、調整用の火力発電の設備コストが必要だということを忘れてはならない。現実的に原子力と太陽光、風力発電だけでは電力は供給できない。こういう状況を打開して、しかも火力を減らそうとしたら、結局は安定な出力を持つ自然エネルギーを増やすしか方法がない。

今の段階で考えられる唯一の突破口は宇宙発電だ。しかし、現実化には100年かかるだろう。

コストも高い。地上3万6000キロメートルの静止軌道に出力100万キロワット時の発電設備をロケットで打ち上げるには、概算で10兆円かかる。100万キロワット時の原発はせいぜい数千億円だから、要するに1ケタ高い。送電手段としてはマイクロ波とレーザーが考えられる。

--日本の新エネルギー開発政策をどう評価しますか。

少なくともかなり明確だということは言える。たとえば太陽光発電などを、これだけ国費で開発している国はない。ただ、新エネルギーというけれども、実際にやっているのは太陽電池と燃料電池程度で、タマがそれほどない。まして宇宙発電に取り組むとなると、今度は額が大きすぎて、話が進まない。

宇宙発電はSF的だと思われがちだが、自然エネルギー利用の方策としてはいちばん現実的。その開発は国際的な共通利益になるのだから、核融合と同じように、世界的な協調体制でやるべきで、そうしたリーダーシップを日本がとってもよい。

(週刊東洋経済編集部)

かや・よういち
(財)地球環境産業技術研究機構(RITE)副理事長、地球環境産業技術研究所長。東京大学名誉教授。1957年東京大学工学部電気工学科卒業、62年東京大学数物系大学院修了、工学博士。東京大学工学部電気工学科教授、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授などを経て98年より現職。日本におけるエネルギー・環境システム工学の第一人者。

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