森友学園問題、不動産のプロはどう見たか 渦中の現場で見えた「不自然な事実」とは?
ところが、森友学園側は「建物が建つ部分についてのみ埋設物撤去を行った」としており、国土交通省の平垣内久隆航空局次長は国会答弁で「建物が建設されていない部分は約3億6000万円」と回答している。そうなると少なく見積もっても建物が建設されていない敷地部分の撤去費用に相当する3億6000万円は使われておらず、学園側の手元に残っているのと同じことになる。
筆者が5日に現地確認を行った段階で積まれていた盛り土には、若干の生活ゴミが混じる程度の土が目算で2000立方メートルほど置かれている状態であった。仮にこれをすべて産業廃棄物として処分したとしても、大きく見積もっても1億円もかからないはずだ。当初の見積もり時に前提としていたゴミの混入率である47.1%とすれば、その半額以下だ。
そもそも大阪航空局が算定した埋設物撤去費用約8億円の根拠はどのようなものだったのか。
対象面積を敷地8770平方メートルの約6割である5190平方メートル、深さは杭(くい)を打つ敷地が9.9メートルまで、その他の敷地は3.8メートルまで。ゴミの混入率を47.1%とし、ゴミの量を1万9500トンと推計した。基準に照らすと掘削や運搬、処分などに8億1900万円かかると見積もった、という。その算出根拠は1万2200立方メートルの残土を搬出し、汚染されていない土を1万1100立方メートル搬入するというものである。しかし筆者が現地を見るかぎりでは、そのような工事が行われている形跡はなかった。
国有地の売却額開示の原則は、あくまで財務大臣通達によるもので、非開示とすることは珍しいことではあっても違法性はない。今回、森友学園側が非開示を要求したわけだが、「何か意図があったのではないか」と勘繰られてしまうのには、こうした理由がある。
また、この土地取引をめぐる一連の経緯は、異常なまでのスピーディさと柔軟さで物事が進行している。こうした対応のすべては、国によれば、「森友学園の4月開校に間に合わせるため」とする。言うまでもなく、国有財産の取引は非常に厳格なものであり、日程も価格も融通が利くものではない。こうした説明にも不可解さが付きまとう。
森友学園と国の契約書には何が書いてあるか
筆者は森友学園と国の賃貸借契約書・売買契約書を入手し中身を精査した。その結果、これらの取引そのものには違法性がないことがわかった。財務省側にも土壌汚染対策工事の実施とその内容を確認する義務はない。しかし、国有財産を処分する今回のケースでこうした契約を締結するのは適切であったのか、疑問が残るところだ。財政法9条では「国の財産は、(略)適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。」とされていることも、よく考えるべきだった。
安倍晋三首相は森友学園の籠池泰典理事長との関係について、国会答弁で何度も「知ってはいるが直接の面識はない」といった趣旨の答弁をしている。一方、籠池理事長は「(安倍首相に)小学校の見学に来てもらい、住吉大社にもご一緒させていただいた」とし、食い違いが出ている。昭恵夫人は過去の講演会において「家に帰ってからも主人に前々から塚本園長(籠池理事長)から主人にお手紙や電話をいただいたり、実際にもお会いいただいたりしていました」と発言している。野党はこの点について更に厳しく追及し真実を明らかにするべきだろうし、安倍首相も認識に誤りがあったのであれば速やかに訂正するべきだろう。
これでさらに国会が紛糾し、停滞する事態となれば、株価や不動産市場にも悪影響を及ぼすかもしれない。
籠池理事長は10日夕方の会見で小学校の設置認可申請を取り下げたと発表。「苦渋の決断。涙が出る思い」と語っている。不動産売買契約書によると、学校認可が下りなければ国はこの土地を買い戻したうえで違約金を請求できることになっている。事態の早急な解決が望まれる。
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