仕事のできない人は相手の話を聞く力がない 「正しい敬語」ちゃんと使えていますか

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このように表面上は丁寧に見えても、実は相手を下に見ている言葉遣いを、私は「見下し敬語」と呼んでいます。ほかにも取引先との会話で自社のことを「×当社(〇弊社)」と言ったり、上司や取引先の発言に対して「×そのとおりです(〇おっしゃるとおりです)」と言ったりするなど、知らずに相手を格下扱いしている例は少なくありません。

2つめの「〇〇様はおられますか?」は、敬うべき対象を間違えた「逆さま敬語」です。敬語が逆さまになるのは、謙譲語(自分を下げる言葉)と尊敬語(相手を立てる言葉)の使い分けができていないのが原因。この例でいえば「おる」は「いる」の謙譲語で、自分に使う言葉。相手の所在を問うときは、尊敬語の「いらっしゃいますか?」を使うのが正解です。ほかにも取引先との会話で「×ご承知ですか(〇ご存じですか)」「×鈴木課長がおっしゃっています(〇上司の鈴木が申しております)」など、ウチとソトの違いを適切に表現できていない言葉遣いが目立ちます。

3つめは、結論から言うと「お茶でございます」が正解。「なります」と言われるようになった理由は諸説ありますが、飲食店のアルバイトなどでこう習った人も多いようです。同じく「×こちらのほうは(〇こちらは)」「×早める方向で(〇早めるように)」などのように、語尾をぼかす「ぼかし敬語」は、とくに若い人が使いがち。これらは「何となくソフト」な印象を与えるものの文法的には誤りで、イラッとする人も多い間違いです。

このように敬語の使い方1つとってもさまざまな誤りがありますが、厄介なのは、いずれも自分では「丁寧な言葉遣いができている」と勘違いしていることです。言葉遣いは、注意してくれるうちが華です。

取引先が指摘してくれることは皆無なほか、歳を重ねるほど相手にされなくなります。誤りを正す機会を逸すれば、この先何十年と信頼を失い続けることになるのです。

それを示すデータがあります。大手企業数十社に対するアンケート調査で「昔に比べて言葉遣いが乱れていると感じることはあるか」と質問したところ、管理職で「強く感じる」「感じる」と回答した人は合計68.7%。管理職以外の人の回答(54.9%)と比較して、約14%高い結果となりました。

ここからわかるのは、責任ある立場の人ほど、言葉遣いの乱れを重く見ているということ。仮にあなたが管理職だとして、言葉遣いが丁寧な部下とそうではない部下、どちらに仕事を任せたいと思うでしょうか。能力に大差がなければ、当然前者です。適当な言葉遣いしかできないままでは、責任ある仕事は任せられません。誤った言葉遣いは、キャリア形成にもマイナス作用を及ぼすのです。

まずは「話の聞き方」を極めろ!

正しく美しい言葉遣いは、誰でも、何歳からでも身に付けられます。しかし会話に苦手意識がある人ほど、はまりやすい落とし穴があります。それは「自分が話す言葉ばかりに意識を向ける」ことです。

ビジネス会話の基本は「相手の話をきちんと聞く」こと。会話が苦手と感じている人のほとんどは、実は「話し方」でなく「聞き方」に問題があります。流麗な言い回しやしゃれた切り返しなど必要ありません。大切なのは、誠実な受け答えで「相手の気持ちを受け止める」こと。それだけで相手に満足感を与えるので、評価は格段に上がります。

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