ポスト京都議定書 セクター方式に懸ける電力、鉄“悪役”の論理
資金面、技術面の制約が「セクター別」の足かせ
ただ、課題も多い。省エネ技術はコスト削減に直結するだけに、供与される途上国側企業の競争力を高めることにもなる。日本側は「あくまでもビジネスとして考えて」(JFEスチール技術企画部の飯野吉嗣理事)おり、途上国側が代価として払う資金を確保するための解決策として「何らかの公的ファンドが必要」(同)だとの考えも出てきているが、今のところ具体的な構想はない。
セクター別アプローチの有効性を示すには、国際社会にそのポテンシャルの大きさを見せる必要がある。新日鉄の大分製鉄所で稼働が始まった次世代コークス炉のような新技術は強力な武器だ。しかし、既存技術の枠内での削減は、これでほぼ限界と見られている。
さらなる削減には、製造方式を根本から変える必要がある。鉄鋼業界は今年度から「COURSE50」という新たなプロジェクトを立ち上げ、コークスに代わって水素を還元材とする製鉄法の開発に乗り出した。酸素と水素が結合すれば水となり、CO2は排出しないというわけだ。
しかし、期待の水素還元製鉄も、反応速度が速い水素を使って、どこまで均一に還元できるのかなど、実用のメドは立っていない。だが、こうしたハードルを越えてこそセクター別アプローチは生きる。新技術への挑戦は日本製造業の底力を試している。
(週刊東洋経済 撮影:吉野純治)
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