相鉄「深夜の切り替え作業」で何が変わる? 時間との闘い!高架化作業を密着取材

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移設途中の軌道。手前と奥で位置が大きく違うのがわかる(記者撮影)

バラストの撤去やレールの切断が完了すると、いよいよ「大振り」と呼ばれる軌道の移設作業が始まる。全長70メートルにわたって、軌道を横に約2.5メートルずらすこの作業、手段は機械ではなく「人力」だ。数十人の作業員が「よーッ!よーッ!」とかけ声を上げながら、枕木がついたままのレールの下にバールを差し込み、鉄のレールとコンクリートの枕木という固い素材の軌道を少しずつ横へと動かしていく。

まさに「人海戦術」だが、この方法で軌道はぐいぐいと位置を変えていく。こうして新しい高架線の軌道へつながる位置まで移動させるのだ。終電の発車から約1時間半、3時を過ぎる頃には軌道の移設がほぼ完了した。

大切なのは段取りと事前の作業

移設作業が終わりに近づいた軌道の様子。手前の枕木がもともと線路があった位置だ(記者撮影)

ホームの一部を撤去して軌道を移設するという今回の工事。部外者からすると「難工事」のように思えるが、相鉄の星川・天王町駅付近連続立体交差工事事務所長、矢島学氏によると「技術的にはそんなに特殊なことはなく、通常の夜間作業などでやっている仕事が複数あるようなもの」だという。

むしろ今回のポイントとなったのは、限られた時間内に狭いスペースで複数の作業を進めるための段取りや課題の共有といった事前の準備、そして準備したことが本番で実行できるかどうかだったという。今回の切り替え工事には、天王町駅以外の作業員を含め全体で約400人が従事した。スムーズな工事の進行には情報の共有や意思統一が欠かせない。

そのために重要なのは「なるべく事前に作業を済ませておくことや、リハーサルを行なって段取りを確認しておくこと」(矢島所長)。たとえばホームの解体・撤去については、実際に一部を解体して時間の確認などを行なうリハーサルを2月中の夜間に一度実施し、タイムスケジュールの確認や共有を行った。リハーサルによって、作業にあたる関係者が本番当日の流れを事前に経験できたことが「(スムーズな作業のために)非常に大きかったと思う」と矢島所長は語る。

次ページ開始から約14年半を経ての高架化
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