非上場企業の私物化をやめれば日本は変わる 牛島弁護士「過酷な立場の株主を救済せよ」
少数株主としては、会社に不満があるなら株式を売却して資本を回収すればよい、ということになるかもしれない。しかし、上場会社であれば市場で株式を売却することは容易だが、非上場の場合はそれが難しい。非上場の同族企業の株式は、定款で取締役会や株主総会の決議が必要となる「譲渡制限株式」とされていることが多い。「譲渡制限」といっても、まったく譲渡できないわけではないが、その仕組みは少し複雑である。
まず、株主または株式を取得した者から、会社に対して承認請求をする必要がある(会社法136条、137条1項)。もし、これを会社が認めない場合は、会社自身が買い取るか、会社が別の買取人を指定することになる。
「会社に公私混同なんておかしなことは1つもないというオーナー経営者なら、承認しても今までどおりの公明正大な経営を続ければいいだけ。しかし、そう胸を張れる会社は多くない」(牛島弁護士)
実質的に株式を売却することはできない
非公開会社では、株主間の個人的な信頼関係が重視されるから、会社にとって好ましくない者が株主になることを防ぐために、こうした仕組みになっている。一応、最終的には少数株主にも資本回収の道は残されているという建前になってはいるが、現実はそう簡単ではない。そもそも、会社に対する請求の前提となる、株式取得者を見つけることが難しい。最終的に取得できるかもわからないのに、わざわざ取引をする人はいないからだ。
株式に流動性がなければ、市場による経営者への牽制は期待できない。そのため、経営者である大株主による公私混同が行われたり、非効率な経営が放置されることにつながってしまう。
また、少数株主は単に経済的利益を得られないというだけにとどまらず、大きな経済的負担を負うこともありえる。それは相続の問題だ。適切な配当が行われない結果、非上場同族会社では内部留保が積み上げられ、株式自体の評価額が高額となっている場合も少なくない。少数株主が売ることもできないまま死亡して相続が発生してしまうと、それを承継する人は何らの対策を打つこともできず、重い相続税の負担を強いられることになるのだ。こうなってしまうと、まさに「踏んだり蹴ったり」である。
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