「不幸の連鎖」を断つ、ある夫婦の対等な結婚 20年付き合ったパトロンと別れ、46歳で結婚

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「実の娘みたいにかわいがってもらい、これが本当の家庭なんだなと生まれて初めて感じることができました。でも、省吾さんは本家の長男です。同じく田舎出身の私としては子孫繁栄は大丈夫なのか、と気になってしまいます。私は子どもがつくれる年齢ではないし、できれば省吾さんと2人だけで生きていきたい。それでもいいのかとお義母さんに確認しました」

省吾さんの母親の答えは強く、明快なものだった。

「そんな心配はしなくていい。2人で仲良く、健康に幸せに暮らしてくれれば、それでいいから」

1人でも生きていける人だから

そして、涼子さんと省吾さんは入籍した。交際から6年間の月日が流れていた。結婚式や披露宴はせず、同棲していた頃から何ら変化はない。「子どもにかけるおカネや時間がいらない分、社会に貢献しよう」と、それぞれのスキルを仕事や地域で発揮している。自宅には保護猫4匹を引き取った。夫婦も加えた「6匹」で仲良く雑魚寝する時間がいちばんの幸せだと省吾さんは言い切る。ただし、それぞれの生活はお互いに尊重している。

「涼子さんは1人でも生きていける人です。だから、妻のために仕事を頑張る! という意識は僕にはありません。1人よりも2人のほうがかけ合わせで面白くなるから一緒にいるだけです。かけ合わせの面白さがないのであれば、1人で生活したほうが気楽だと思います」

個性が強い2人だけに強く衝突しないための工夫もしている。夕食のおかずから見たいテレビ番組まで、小さなことでも「これはどう思う?」とすり合わせを行うのだ。家事は気づいたほうが率先してやる。2人暮らしなので、自分がやるか相手がやるかのどちらかしかないからだ。家事をやってもらったほうは「ありがとう」を忘れない。ただし、相手の言動でどうしても見過ごせないことははっきりと伝える。

「子どもの頃に父親が暴れた影響なのか、男の人が怒鳴ることがすごく苦手です。以前の省吾さんは飲食店の店員さんの態度が悪いと大声で文句を言ったりしていました。何度か注意して、それだけはやめてもらっています」

インタビュー中、涼子さんからは健やかな強さを感じ続けた。子ども時代のつらい家庭生活の記憶を、省吾さんとの穏やかな結婚によって克服したのだろうか。涼子さんはやんわりと否定する。

「私は結婚する前からヨガなどで心身をすっきりするように努めてきました。自信を持てず、自分は無価値だと思っていると結婚生活はうまくいかないと思います。経済的にも精神的にも自立しておかないと、結婚相手に依存してしまい、DVも発生しやすいのではないでしょうか」

大人として成熟するタイミングには個人差がある。時代によっても異なるだろう。現代では、30代後半で「少しは大人になった。独占欲や依存心を抑えられる」とようやく自覚する人も少なくない。

男女のどちらかが「子ども」のままで結婚をすると失敗してしまいがちだ。涼子さんの話を聞き、本当の意味で大人になってからの結婚にも意味があると改めて感じた。

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