トランプ演説にソフトバンクが登場したワケ インテル、ウォルマートよりも重視?

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「世界のすべての国々は、アメリカの強さ、誇り高さ、自由を知ることになろう」という、実に耳に心地いい名調子の中で、「世界のすべての国々」のあとに挿入された“friend or foe” (友好国にせよ敵対国にせよ)という言い回しがそれである。

「f」で始まる単語を二つ並べた語感のよさもさることながら、この”foe“(フォウ)という言葉には、”enemy“(エネミー)のような耳障りの悪い語感がない。ニュアンスのいい丁寧な表現と言っていい。

トランプ大統領はメディアに対してさんざん悪口をたたき、メディアを「国民の敵」と激しくののしってきた。その「敵」という英語にトランプ大統領は“enemy”を使っている。演説の中では“enemy”ではなく“foe”という品のある表現を使った。品のいいジャーナリスティックな表現を使って見せたトランプ大統領一流の隠し味といえる。これにはさすがのメディアも文句をつけようがない。スピーチライターが変わったのではないかと思われるほどだ。

ソフトバンクの企業名がなぜ挙げられたか

トランプ大統領が演説の中で誇らしげに述べた「就任後1カ月での公約の進み具合」の中で、アメリカに大規模な投資を予定している企業名がいくつか具体的に挙げられた。その中に日本のソフトバンクが堂々と仲間入りした。これは注目すべきことだ。その名誉ある企業名は、フォード、フィアット・クライスラー、ゼネラルモーターズ、スプリント、ソフトバンク、ロッキード、インテル、ウォルマートという順に特定された。これはABC順ではない。

最初の3社はアメリカを代表する「ビッグ3」であり、その位置は文句をつけようがない。ところが、ソフトバンクはスプリント(ソフトバンクのグループ会社)の次に名を連ねている。何とアメリカの国防産業の大黒柱ロッキード、ハイテクの雄インテル、さらに全米で代表的な高収益巨大企業のウォルマートなどが後塵を拝していることだ。ソフトバンクがいかにトランプ大統領の覚え目出たいかという証拠である。

ソフトバンクグループを率いる孫正義氏は、トランプ氏が大統領に就任する前にトランプタワーを訪れ、巨額の投資と大量の雇用を約束した。そのときトランプ氏は報道陣の前で孫氏のことを「MASA」(マサ)と呼んだ。この親しみを込めた愛称の連呼が最上級の日本贔屓のメッセージだったことはすでに書いた。わざわざソフトバンクの名を挙げたのは、孫氏への感謝の気持ちの表れと言っていい。

日本人では、孫氏よりも前にトランプタワーを訪れたのは安倍晋三首相だった。海外首脳の中で最初に出向いてくれた安倍首相に対して、トランプ氏は最大限の歓迎ぶりを示した。愛娘のイヴァンカを同席させたことが何よりのもてなしだった。その好運な出会いがのちの2月10日の日米首脳会談の大成功へ導くことになったことは周知のとおりだ。

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