弁護士ドットコムが、地道に稼ぎ続ける理由 「脱ハンコ」契約書は第3の柱に育つか?

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元榮社長はさらに先の事業展開も見据えている。「中長期では、簡単なガイダンスに従って契約書を自動生成できるサービスや、当社の会員になっている弁護士や税理士にクラウド上で契約書のレビューを依頼できるようなサービスも作っていきたい」。

また、元榮社長はクラウドサインのようなサービスを含む「リーガルテック」(法律とテクノロジーの組み合わせ)と呼ばれる分野が、弁護士の仕事を大きく変えていく可能性があると力説する。

「将来は、弁護士が顧客の相談を受ける際、AI(人工知能)弁護士が横について、必要な資料や過去の類似事例を出してくれる時代が来るかもしれない。『AIが台頭すると仕事を奪われる』という人もいるけれど、僕は違うと思う。年間50件しか担当できなかったのが100件、200件とできるようになる可能性がある。当社もそれに資するようなツールを出したい」(元榮社長)。

祖業の営業支援も、会員数が好調に推移

一方、祖業の弁護士向け営業支援でも、アクセルを踏み込んでいる。今期(2017年3月期)は営業人員を前期比で倍増させ、全国で営業活動を加速させているのだ。また、同社は一般知名度が低い(サイト名の認知度が7%)という弱点があるが、身近な法律問題を題材にしたニュースサイト「弁護士ドットコムニュース」や関連本の出版などの情報発信を通じて、知名度上昇に努めている。

営業支援サービスに登録する弁護士は12月末で1万2100人(前年比30%増)と、国内の弁護士の3分の1を占めるまでになった。そのうち有料会員は2900人(同40%増)だ。一般ユーザーの有料会員(月額300円で法律相談データベースのQ&Aが閲覧可能)も9万1500人(同36%増)と好調に推移している。

2000年ごろから始まった司法制度改革以降、弁護士数は増加し、弁護士の業務広告も解禁された。顧客獲得競争は激化しており、マーケティングニーズはますます高まっている。また、顧客側でも誰にも知られずこっそり相談したいというニーズは根強く、ネットで弁護士を探す人が増えているという。

ニッチながら底堅い需要がある市場で勝負する弁護士ドットコム。新事業と既存事業の両方で攻勢が続きそうだ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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