ロシアと欧米諸国との距離は今、冷戦時代以降で最も広がっている。もちろん両者の利害が一致している点もある。冷戦時代の最悪期でも両者は部分的に協力していた。テロリストの攻撃を防ぐとともに、核戦争などの惨事を回避するために連携しなければならない状況は、現在も変わらない。
冷戦終結後、国際社会は「ユーロアトランティック」(欧州・大西洋地域)の安全保障に尽力してきた。しかし、その努力は緊急性と創造性を欠いていた。すべての当事者が新たなイニシアティブを発揮しないかぎり、事態は悪化するはずだ。実際にテロリストはモスクワ、イスタンブール、パリ、ブリュッセル、ニューヨークといった都市を攻撃した。
2013年以降、ウクライナで殺害された人々は数千人に上るとされる。今日もどこかで新たな戦闘による死者が出ているかもしれない。また罪なき難民が、中東や北アフリカの壊滅的な戦争から逃れようとしている。
痛恨のアクシデントを防ぐために
そうした中、欧米諸国とロシアの関係は急速に緊迫化しており、事故や過失、誤算が新たな戦争を引き起こすリスクが高まっている。
両者の共通の利益を高めるための第一歩は、ユーロアトランティックの安全保障を改善するための、具体策を施すことだ。考えうる具体策は以下の5つである。
1つ目は、核兵器が使用される危険性を除去すること。今、何らかの偶発的な出来事か誰かの過失によって、核弾道ミサイルが発射される危険性が高まっている。脅威を最小限に抑えるためには、まず米ロの大統領が「核戦争には勝者がおらず、決して起こしてはならない」と改めて宣言することだ。
かつてレーガン元米大統領と旧ソ連元指導者のゴルバチョフ氏は、両国の関係改善のために共同声明を行った。同声明の内容は今でも参考になる。