ヤマハ対JASRAC、著作者はどちら側に立つか 音楽教室から著作権料、他業態はすでに徴収

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JASRACの大橋健三常務理事は「徴収の料率など条件交渉にはいくらでも応じる。話し合いで円満に解決したい」と話す。ただそれは、あくまでヤマハがJASRACに徴収の権利があることを認めるという前提だ。

JASRACは3月末までに教室側からの回答を求めている。その意見を踏まえ、7月に徴収の方針を定めた「使用料規程」を文化庁に提出、2018年1月から徴収開始を目指す。教室側が応じなければ、争いの場が法廷に移る可能性もある。

仮にJASRACの提案が全面的に通れば、音楽教室はどうなるのだろうか。

少子化や習い事の多様化もあり、音楽教室の事業環境は厳しい。ヤマハの音楽教室事業の収入は約260億円、5億円の赤字(2015年度)だ。ヤマハは教材の楽譜やCDなどの著作権料に関して、すでに年間1億円以上をJASRACに支払っている。さらにレッスン料の2.5%を払うとなれば6億円超の追加費用が生じることになる。

徴収は額ではなく、公平性の問題でもある

三木氏は「JASRACが管理している曲の使用を減らすことはできる」とするが、使用料を徴収されればレッスン料に転嫁せざるをえない状況に追い込まれそうだ。

JASRACは大手音楽教室から、全体で10億~20億円の徴収を想定(いずれは個人運営の教室からも徴収を予定)。その額は2015年度の徴収額1116億円からすれば少ない。が、歌謡教室など一般的に営業規模が小さい業態からも徴収しており、音楽教室を免除することは公平性に欠けるという考え方だ。

一方のヤマハも手をこまぬいているわけではない。作詞・作曲家など著作者に直接事情を説明して回り、理解を求めていく方針だ。三木氏は「JASRACは著作者から著作権の管理を信託されている立場。著作者が反対すれば提案は取り下げざるをえない」と語る。

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