火災のアスクル倉庫、何が間違っていたのか 最先端の物流センターに潜んでいた死角

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アスクルの場合、このGTPに加え、高精度のカメラなどを使用した画像認識技術と最新のロボット技術を組み合わせて、「アーム型ロボット」に細かなピッキング作業を任せることに挑戦している。ロジパーク首都圏は”最先端の実験場”の位置づけで、その結果を見ながら、横浜のセンターにアーム型ロボットを実践配置してきた。

アーム型ロボットは細かいピッキング作業もこなす(撮影:風間仁一郎)

能力は「熟練した作業者」にはまだ及ばないものの、完全自動化に向けてメドが経ちつつある状況だ。同社では将来的な可能性として、ピッキングを担う作業員が、ロボットの簡単な操縦やメンテナンス作業など、「より次世代の仕事」を担うようなロードマップも念頭に置いており、極めて先進的な戦略が張り巡らされていた。

だが、最先端のセンターは「内部からの火災」にはもろかったことになる。16日、1階の段ボール置き場付近で発生したとみられる火災時、倉庫内では400人以上の従業員が作業していたというが、当初は「最新設備なのだから、初期消火が的確になされる」と思ったはずだ。だが、在庫商品の多い2、3階へと延焼した。

コピー用紙などの可燃物が多いことや、外壁には窓口などの開口部分が少ないこともあり、消火活動は難航を極めた。19日には倉庫内のスプレー缶への引火が原因とみられる二度の爆発が発生、大半を焼損してしまった。現在は横浜の物流センターなどで機能を代替しており、法人向けのネット通販は通常通り配送しているが、個人向けのLOHACOでは一部地域で最大2日程度の配送の遅れが生じている。

BCPには念を入れていたが・・

決して自動化だけに邁進していたわけではない。2011年に起きた東日本大震災で仙台の物流センターや本社が被災した教訓を生かし、停電時にも連続で21時間発電が可能な自家発電設備を導入。大地震などの発生時には既存の別の物流センターの機能をカバーしたり、本社機能の移転にも対応できるようにするなど、BCP(事業継続計画)には念を入れていた。

利用者からの声を掲示し、従業員の意識を高めていた(撮影:風間仁一郎)

「防火シャッター設置などの設備面に加え、避難訓練などについても、法令に基づいて実施していた」(同社)。「ロジパーク」という言葉通り、作業員の無期雇用や健康に配慮した食事提供、センターの壁面緑化にも率先して取り組んでいた。

それでも事故は防げなかった。在庫品も含め、ロジパーク首都圏の大半が焼損してしまったこともあり、今回の損失は数十億円規模に上りそうだ。損失については一定程度、火災保険でカバーされるものの、補てんされる範囲や金額については鎮火後の現場確認や調査終了後になる。そうした状況を受け、同社は3月16日に予定していた2017年5月期第3四半期の決算発表を延期した。

最先端のセンターのどこに死角があったのか。そもそも大型倉庫を作るにあたって、規制当局の対応が適切だったかどうかも争点となる。詳細は鎮火後の検証を待たなければならないが、その内容はアスクルだけでなく、物流業界全体にとっても大きな影響を与えそうだ。

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