3)最初に自分の必要なものを手に入れる
対等に条件を認め合うという約束をしたとしても、向こうは好きなものだけ手に入れたら、こちらに対する約束は忘れてしまう。こちらの条件をまずは最初に通す必要がある。
4)利害が一致すればうまくいく
お互いに見返りのある取引に対しては積極的。欲しいものをきっちり言ってくる人には腹を立てない。利害が一致する点を見つけるのが得策。
5)「相手によく見られたい」という意識を利用する
味方とみなす人からはよく見られたいと思うため、うまくいかないとき、こちらは「怒り」を見せるよりは「残念だ」と言うほうが効果的。
とまあ、ナルシシズムは治癒できるものでもなく、根本的な解決策はあまりないのが現実らしい。そもそも、共感力のない人物をトップにするという選択自体、非常にリスクが高いということだ。
すり寄るのは間違った戦略ではない
2月に行われた日米首脳会談は、安倍首相が「ナルシスト」の頂点に立つトランプ氏に徹底的にすり寄った感がある。「朝貢外交」などとも揶揄されたが、「敵か味方か」でしか人を判別できないトランプ氏の性向を鑑みると、これは間違った戦略とはいえない。
ただし、こびへつらうだけでも、言うことを聞いてくれるわけはない。トランプの老獪な交渉術についての記事でも触れたが、相手は百戦錬磨、越後屋ばりの「悪徳商人」である。こちらがうまく転がせるほど、甘くはない。安倍首相と会うタイミングの直前で、習近平主席と電話で長時間、会談し、「一つの中国」政策を認めるなど、抜け目なさを見せている。
日本にいい顔を見せつつも、結局、台湾も中国も日本もロシアも彼にとっては「手ごま」でしかないのだろう。すり寄ってくるものには甘い顔を見せるが、だからといって、恩義をとおすとか、忠節を尽くそうなどとは考えていないはずだ。不動産取引同様、てんびんにかけて、競わせて、値段をつり上げ、少しでも高値をオファーしてくる国を優先するのではないだろうか。
筆者の見立てだが、トランプ氏は国全体というより自分を支持する人々や取り巻きの意見や利益にプライオリティを置くだろう。さらに、約束を反故にすることにも、良心の呵責も感じないだろう。従属的にすり寄るだけでは下手に見られ、アメリカ国内のみならず世界に渦巻く反トランプ世論を敵に回す可能性もある。そこが難しいところだ。
トランプ氏はロシアのプーチン大統領のような強者を崇め、弱腰で、自分より下位にあるとみなす者に対しては敬意を払わないのではないか。結局は利害の一致点を見いだしつつ、丁々発止、キツネとタヌキのごとく、化かし合いをしていくしかないのかもしれない。
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