東芝の危機はすでに10年前から始まっていた

原発事業の「高値づかみ」がすべての元凶

今回の損失の責任を取って、2月15日付で原子力事業出身の志賀重範会長が辞任。WHのダニー・ロデリック会長は兼務していた東芝本体の執行役上席常務待遇・エネルギー事業の社内カンパニー社長を解嘱された。

両人の責任が重いことに変わりはないが、危機の原点は綱川社長の見立てどおり、2015年末ではなく2006年にある。

もっとも、東芝に過去を悔やんでいる暇はない。

まずはWHの内部統制の問題に決着をつけ、正式な四半期報告書を提出する必要がある。再延長も可能だが、本来なら定められた期限までに提出できなければ上場廃止だ。また3月15日以降、東証に内部管理体制に関する確認書を提出しなければならない。

メモリ事業売却も綱渡り。売却の前提となる分社には、3月下旬に臨時株主総会で出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を得る「特別決議」が必要になるからだ。その手続きと並行して交渉を進め、3月末までに売却を完了するのは至難の業だ。東芝も3月末に間に合わないことを覚悟しているフシがある。売却できなければ債務超過は解消されない。

ただ、債務超過=経営破綻ではなく、銀行の支援さえ得られれば資金繰りは何とかなる。現に2月15日に取引先金融機関を集めて行った説明会では、正式な第3四半期決算発表の延期と12月末の債務超過を受けても3月末までの融資額維持の合意を得られた。しかしそれは東芝の命運を銀行が握る、銀行管理の状態にあることを意味する。

残された4つのリスク

東芝にはまだ残されたリスクがある。東芝は頓挫した米国における原発計画にからんで2019年からの20年間、年220万トンの液化天然ガスを引き取る契約を結んでいるが、売り先が決まっていない。このままでは最大1兆円規模の損失となる可能性がある。

2011年に産業革新機構と共同出資したスイスのスマートメーターメーカー、ランディス・ギアは業績が期待に届いていない。さらに東芝は英国で原発計画を進めており、その先行きも危ぶまれている。WHに3%出資しているIHIなど少数株主から株の買い戻しを請求されるリスクもある。脆弱な財務体質では一部の顕在化にも耐えられない。

当記事は「週刊東洋経済」2月25日号<2月20日発売>からの転載記事です

14日の記者会見の少し前、東芝社内で従業員向けに綱川社長のメッセージ映像が流された。決算延期の謝罪から始まり、原発事業の損失や業績、財務の見通しなどが語られた。メモリ事業のマジョリティ維持にこだわらない方針に言及したとき、従業員から驚きとも嘆きともつかない声が上がったという。

メモリ事業が連結から外れた場合、残るのは成熟したインフラ事業ばかり。何とか生き残ることができても、その先の成長シナリオはまったく見えてこない。

未曾有の危機にある東芝は再生できるのか。明らかなのは、現在の姿のままでは存続できないことだ。名門の「解体」がこれから始まる。

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